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Column

人事の歴史は繰り返す

2025.5.22

5月も下旬です。もうすぐ梅雨ですか?
きつい季節がまた来ますねえ。
とはいえ、夏生まれなんで、冬よりは好きですけどね。

まあ四季は繰り返すので、春が来れば夏が来て、秋になって冬になって春が来る。

それはそれでよいしすばらしいことです。

しかし、「人事の歴史は繰り返す」は良い事なのか、大いに疑問です。

何のことを言っているかというと、最近の人事関係のニュースで、

①賞与の給与化
  (ソニーG、ダイワハウス、バンダイなどが、賞与比率を引き下げて、月例給を引き上げる)
②住宅手当アップデート<今日、5月22日の日経新聞朝刊>
  (セブンイレブン、月6000円増、商船三井は倍増)
などが話題となっており、ヤフーニュースによれば、これらによって世間が「ザワついている」とのこと。

うーん、僕もそれなりに長く生きてきて、人事の経験もウン十年、ということになると、
「え、それって昔もやったよね」
「で、やめたよね」

と思ってしますのです。

「賞与の給与化」という言葉ははじめて聞きましたが、
要するに月例給を想定年収の12分割に近づけて、月給を厚くするわけですが、
それって前に流行って後に多くが廃止された「年俸制12分割」でしょう?

12分割までいかないかもしれないけど、賞与比率を下げるということは、
それに近づくことなわけです。

で、僕らは2000年以降、この12分割的な給与支払い方法を、
14分割や16分割に変えて、賞与比率を引き上げることを何社もやってきました。

年収を16分割的にして月例給として、残りの4か月を、業績や個人の成果による変動給的な
賞与にしていく、という作業をやったわけです。

これは、月例給が下がるので、とてもたいへんです。
16分割を12分割にする、要は月例給を上げるのは、はっきりいって「カンタン」です。
ところが逆はとても難しい。
月例給が下がることのショック、社員の抵抗はとても大きなものになります。

いまは若年層が採れない、初任給を上げなきゃ、と言う状況はわかりますが、
安易に「賞与の給与化」なるものを行うと、元にはなかなか戻せませんぜ。
「それを想定いるんですか?」と問いたいのです。

だって、過去にそうしたんだから。

②の住宅手当アップデートだって、2000年以降、そういう属人的手当(評価に関係なく支払われるお金)
をずいぶん苦労して多くの企業が廃止してきましたよね。

つけた手当はなかなかはずせないんですよ。
家族手当を廃止するのに10年かけた会社もあるんですよ。

本にも書いたり講演でもお話ししていますけど、
住宅手当や家族手当は、「それをつけない人を見つけている仕組み」です。

そんな手当を増やすのではなく、全体の給与を上げていくことを考えるべきではないですか?
あるいは、顧客や会社により貢献した人に、より多く払うことをもっと顕著に行うべきではないですか?
基本給を上げるのも、賞与から持ってくるんじゃなくて、
本気で生産性を高めて、社員の給与全体を底上げしようとするべきではないんですか?

人事は長期的な視点が必要です。
過去を振り返れとは言いませんが、歴史には学ぶべきです。

「①・②のような方法論に溺れず、将来にに及ぶ、会社の人事の考え方をしっかりしましょう」

その上で、そのような施策を展開されるならば、それは良いでしょう。
大企業がマスコミで記事になります。
優秀な人事スタッフも多くいらっしゃるので、
思い付きではなくて、よくよく考えてのことだとは思うのですが、
それでも過去にはその大企業が「揺り戻し」をしたのですから、
心配になるわけです。

人が採れないから給与を上げる、ではなくて、
本気で生産性を高めて、高い給与を十分に出せるようになろう、
ということを、人事も真剣に考えなければならない時だと思います。

それから、また最近記事になっている超大手企業の「黒字リストラ」。
まあ、事情はわかりますけどね。
これだって、よくよく長期的に考えてみれば、「本来しなくていい施策」かもしれません。

全体的に見れば、①②とちょっとちぐはぐに見えます。

人事は、その施策のメリット、デメリットを本気で長期的に考えなければなりません。

改めて、10年後、20年後を考えてください。
今年、来年、高い初任給で採用した人たちも、中高年になっていきますから。

さて、ゴールデンウイークに捻挫しました。
まったくの不注意(友人に、「捻挫ってのはほとんど不注意でなるもんだ」と言われました。確かにねえ)で、
なかなか完治しません。

ゴルフ2週間行きませんでした。でもこれからは行きます。

西尾 太

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