コラム
洗い替えは気をつけましょう
給与・賞与制度には、「積み上げ・積み下げ」方式と、「洗い替え」方式がある。
基本的には、月例給に関する部分は「積み上げ・積み下げ」方式を使い、賞与については「洗い替え」方式を使う。
積み上げ・積み下げ方式に関しては、「これまでの給与額に対して、上げるか、下げるか」を決めるもので、30万円の給与の人であれば、それを基準として上げ下げをしていくという方式になる。
洗い替え方式は、「これまでの支給額は考えない」で、都度支給額を決める方式で、賞与であれば、前年にいくら払ったかは考慮しない(運用面では実際そうではないことが多い)で、評価に基づくなどして決定する。
で、どちらもそれなりに有効なものではあるが、気を付けていただくことは、「月例給に洗い替えを入れると、運用できなくなる」ということだ。
よくあるのは、月例給の中に「成果給」などとして、評価に基づいた給与額を設定するとしたときに(基本的には年俸制というやつは、月例給全体が洗い替えということではある)、標準評価が「A」で、「SS」「S」「A」「B」「C」の場合、Sだといくら、Aだといくら、と決めて支給するものだ。
これを絶対額としてしておくと、去年SSだったから7万円の支給だったが、今年はSだから5万円・・・などとなり、標準以上の評価なのに、「成果給」が下がってしまう。つまり月例給が下げることにもなる。
一時金として支給している賞与ならばありだが、月例給がこのように変化してしまうと、「標準以上の評価をとっているのに給与が下がる」ということになり、高い評価を得てもモチベーションが逆に下がってしまうことになる。
考えてみていただきたい。もし月例給が1000円下がったら、みなさんモチベーションどうなりますか?年間1万2000円。会社としてのコストとしての削減額としてはとても少ないが、本人にとっては、どうだろう、12万円ぐらいかそれ以上のモチベーションダウンになるんじゃないだろうか。
下がる金額が100円だとしても、会社の損失は年間1200円では済まないと思う。
なので、月例給においての洗い替え方式の導入は、「後のことを考えたら絶対にお勧めしない」施策なのだ。
標準評価ならば昇給か、あっても据え置きだろう。標準評価未満ならば下がることはやむを得ないかもしれない。
「給与が下がらない仕組み」がいいというものではない。そういう仕掛けはこれからの世の中、しっかりと整備していくべきだ。だけど、どういうときに下げるのかを慎重に考えておかないと、失敗する。
年俸制をやめる会社が多いが、それはそういうことに気付いたから、とも言えると思う。
制度を入れる・変えるときには、後のこと、運用面をよーく考えて行っていただきたいと思う。