コラム
AだからBという思考はダメ
そうこうするうちに(どうこうしていたんだ?)、夏至も過ぎ(毎年書いてますが、僕は夏至に向かって元気になり、冬至に向かって元気がなくなっていきます。夏の子なんで)、梅雨も明けようとしていますね。
猛暑と豪雨と、極端ですよね。
そうこうするうちに、「評価基準」は18刷、「人事制度の基本」も3刷と、増刷をしていただきました。ありがとうございました。
ダイヤモンドオンラインとアルファポリスさんのサイトでの連載も始まっています。
あ、「人事の学校」は200アカウントを超えました。こちらもありがとうございます。
さて、ここのところ、「人事の失敗」ということに注目しています。
「人事は失敗する」のです。僕自身これまで、「人事の失敗」を多数見てきています。自分で「仕出かした」こともあります。
人事の失敗って、「採用の失敗」「異動配置の失敗」「任命の失敗」「制度構築の失敗」「制度運用の失敗」「労務問題対応の失敗」「研修の失敗」「IT化の失敗」など数々あります。
採用なんて、いつも「失敗と背中合わせ」です。採用担当者の皆さんはそこを肝に銘じなければなりません。
しかし「失敗しても仕方ないよね」では済まされません。会社の業績とその人の人生がかかっているんですから。
いろいろな企業が取り組んでいる「新たな人事の取組み」はメディアに取り上げられ、もてはやされます。「こんな取り組み始めました」って鼻高々に語られます。
しかし、「その後どうなった」はあまり取り上げられません。特に「失敗」してしまったことはほぼ語られません。そりゃそうですよね。
しかし、新たな取り組みの数だけ、失敗は増えていきます。
しかし、企業も人も成長しようと思うなら、失敗から学ぶことも大切です。
僕はそれなりに人事をずっと見てきたんで、失敗のパターンはある程度見えているような気がします。
「考え方」をしっかりしないまま、「他社がやっているから」という安易な理由だけで「やり方」に走ってしまうというのはその一つのパターンです。
そこにある思考パターンが「AだからB」というものです。これは危ないです。
昔の資料を見ていたら、僕の師匠が作った資料にこんなサイクルが出ていました
「制度」⇒「新事実」⇒「罪滅ぼし」⇒「方法論」⇒「制度」⇒「新事実」⇒・・・・。
いま、妙に納得してしまうのですが、
・あまりよく考えずにいいものだと思って何らか「制度を入れた」
・想定していなかった「新事実」が露見した
・やばいと思って「罪滅ぼし」を考えて
・「方法論で解決」しようとして
・次の制度を入れて、また新事実が発覚して、罪滅ぼしが必要で、それをまた・・・
負のサイクルですよね。これはまずい。しかし人事ではたくさんあるような気がします。
さすが師匠。20年以上前の30歳代の時にこんなことを言っているなんて。
なんでこんなことになっちゃうんでしょう。
でも、これって本当にたくさんある事例だと思うんですよね。
思い当たる節、ありませんか?
「人事」が気をつけなければならないことのひとつは、次のような考え方だと思うんです。
・人的資本経営が大切だ(20年以上前から言ってるっつーに)
・心理的安全性が何より大切だ
・サステナブルだ
・これからは「ジョブ型」だ
それぞれは決して間違ってはいませんが、一直線に「そうだそうだ」というのがいかがなものかと、
いつも思ってしまうのです。
なんかそういうことにもやもやしていたら、こんな本を見つけました。
これ、僕の大学の先輩が編集協力をしていて紹介されていた本なんですけど、
すべてを信じるかどうかは別として、「もっと広く、深く考えようよ」という意味合いでは、とても参考になる本です。
・環境にやさしいからEV(電気自動車)にします ⇒そもそも日本では何から電気を作っているの?化石燃料が多いんじゃないの?
・ペットボトルは環境に悪い ⇒ステンレスマグだって、環境負荷があるんじゃないの?
成果主義がいいんだ、ジョブ型がいいんだ、人事部が不要なんだ・・・という単略的な思考が、人事の失敗を招き、企業にも人にもダメージを与えてきたと思うんです。
人事の皆さん、よく考えようよ。ロジカルに考えようよ。と呼びかけたいです。
「残業が減れば幸せになれる」
「退職率が下がればみんながハッピー」
とは限らないですよ、ということです。
もっともっと考えなきゃいけないことはいっぱいあるでしょ、と思います。
長くなったので終わりにしますが、最近昇格審査の小論文を多く読んで、「AだからB」、「Aは正しいんだー」という論述をいっぱい見たので、書いてみました。
ではまた。
あ、先日、相模湖カントリークラブで79を出して、僕はゴキゲンです。
西尾 太