コラム
コンピテンシーの抽出
僕は習慣的にNHKの朝ドラを概ね見ています。1日の始まりのレクリエーションみたいなものです。
しかし、今回のはあまりに酷い。朝ドラって、まあ半年もずっと15分枠で毎日続けなければいけないものだから、これまでは多少「おや」ということを感じても「制作もたいへんだよねえ」とスルーしてきましたが、今回はさすがについていけません。まったく共感できません。制作にプロフェッショナルさが感じられません。離脱かなあ。
さて、ご質問もあったようですので、コンピテンシーについて。
もともとコンピテンシーとは、「成績優秀者(ハイパフォーマー)の行動モデル」とも言われたようです。ハイパフォーマーとそうでない人の行動の違いを明らかにすることで、普通の人に成績優秀者になってもらうことのできる行動のモデル、ということでしょう。
それはそうなのかもしれませんが、実際に活用するとなると、難しい面があります。
僕はコンピテンシーなるものともう27年ほどおつきあいしていますが、実感してきたことは「成績優秀者の行動モデルの抽出は極めて困難である」ということです。
これについて元上司をはじめとして、一緒に人事をしてきた人たちとも議論したことがあるんですが、
「ハイパフォーマー=変態」ではないかという仮説があります。
ハイパフォーマーは「普通じゃない人」です。普通じゃない人の行動を、普通の人が真似ようとしてもハイパフォーマーにはなれないんじゃないだろうか、ということです。
僕が営業をしていたころ、A君というハイパフォーマーがいました。すごい大型受注を決めてきます。
しかし、彼と同行したことがあるんですが、営業場面で彼はあまりしゃべりません。気の利いたことを言う訳でもありません。「あー」とか「うー」とか言っています。でも、彼が醸し出す空気感や、ここぞという時に繰り出す的を得た質問などにより、クライアントの心を掴むのです。僕には真似は無理です。
ハイパフォーマーってそんなものではないでしょうか。
結局、人事仲間で出した結論は、「ミドルパフォーマーとローパフォーマーの違い」に注目した方がよいのではないか、ということでした。普通に着実に成果を出す人と、それができない人の違いはどこにあるのか、に焦点を当てるべきではないか。それならば体系化できて、他の人も活用できるのではないか。
もうひとつ問題があります。
「誰がハイパフォーマーの行動特性(コンピテンシー)を抽出するのか」ということです。
これは難しい。僕は27年間コンピテンシーとおつきあいしていると書きましたが、自慢じゃありませんが、僕には無理でしょう。
予め特定のコンピテンシーモデルがあって(例えば「目標設定」や「計画立案」など)、その発揮度合いをインタビューを通じて確認することはできます。しかし、何もないところからハイパフォーマーの行動特性を抽出することは難しいと思います。おそらく日本にそれができる人は極めて少ないのではないかと思います(いらっしゃったらごめんなさい)。
仮に抽出できたとしても、ハイパフォーマーのそれは「変態の行動モデル」ですから、それを普通の人が活用する汎用的モデルに体系化するのは、これまた難しいでしょう。
前述のA君の優れたコンピテンシーは「傾聴力」ということになるんですが、それを文書化し体系化することは、これまた極めて難しいことです。
ということで、「しっかりと成果を出す普通のビジネスパーソンの行動」としてモデル化したものが、当社の「コンピテンシーストラクチャー(もともとはb-cavと呼んでいました)45」です。
これは、いろいろなコンピテンシーモデルを研究して、概ね「網羅的で汎用的で普遍的」だと考えて構築した45項目の行動(コンピテンシー)モデルです。
普通の人が、これを実践することにより、成果を出すことができるモデルであると自負しています。
実際、様々な業種、様々な規模の会社でこれを活用いただいています。
どのようなものかは拙書「評価基準」に示していますので、ご興味のある方はご確認ください。
もしそれでもハイパフォーマーの行動特性を抽出したいということであれば、この45のモデルのどれが特筆的に発揮されているかを確認する、という手もあるでしょう。
ということで、10月からの次の朝ドラに期待しつつ、夏を乗り切りましょう。
(明日のゴルフ、またオジサマたちに負けるのかなあ)
西尾 太