コラム
なぜ「人事部長」採用は失敗するのか
気づけば夏真っ盛りで、またひとつ年齢を重ねてしまった。
今日、営業分野に関しての教育をされている先輩と話していたんだけど、営業部長の外部採用はうまくいかないケースが多いとのこと。人事部長もそうですよ、という話をした。
(ごちそうになってしまい恐縮です)
ご相談も多いし、そういうお話を聞くことも多いんだけど、「人事部長」を外から中途採用しようというスイッチが入られたら、注意いただきたいことがある。
残念ながら、成功する確率は極めて低い。
なぜか・・・。
「企業人事」というものが戦略的に行われていない、或いは行いたい、と思われるから「人事部長を外部から採用しよう」ということになるんだろうけど、人事という領域がいまひとつピンと来ていない、あるいは社内でそれができる人がいないから、外から採ろう、とするわけだけど、そういう状態であれば、そもそも候補者が「人事部長」をできるかどうかを見極める目も、社内にないはずなので、結果的に失敗してしまうことになる。
人事部長採用の失敗は非常に痛いことになる。しかしその失敗が「失敗だった」とわかるまでに場合によっては数年の時間を有してしまうから、尚更痛い。
人事の領域や施策を簡単に表すと、こうなる。
「人事の学校」ではこの全体像をできる限り網羅しているつもりなんだけど、実際この領域全体を経験している人は少ない。
でも、経験はなくても知見があれば、まだ大丈夫なんだけど、これで難しいのは、「ベタベタな人事」は会社の人事の基礎力として大切だけど、経営からはちょっと遠い。難しくて楽しくない領域に見える。そしてここだけを見ると、その会社が人事戦略上大切だと思っているところまで目が届かない。
そして「ベタな人事」は、「ベタベタな人事」がある程度できているところで、これも「企業人事」としては欠かせない部分になる。でも面白いかといえば、それに欠ける。ちゃんとやろうとすると面倒だ。
ここまでを「基幹的人事機能」と呼ぼう。
ところが、「うちの会社らしさ」を醸し出そうとすると、基幹的人事機能だけでは足りなく、その上の「おもしろ人事」施策をいろいろ打ち出すことになる。
社外に公開して「うちの会社いいでしょ」ってなるのは、この「おもしろ人事」部分が多い。
で、経営の関心も高い。
でもね、「基幹的人事機能」が確立していない状態で、「おもしろ人事」だけを先行させても、効果は持続しない。「あれ?いろいろやってるのに長続きしないなあ」ということになる。
さらに、中長期的視点を持って戦略を立てていくのが「人事部長」だとしたら、赤いところの「人事戦略」を経営と一緒に策定して、人事機能としての黄色いところの「人員計画」「採用・配置」・・・・・の各機能をどのように整えていくのかを全体観を持って計画していかなければならない。
僕は「前後左右」と言っているけど、「採用・配置」「制度」「教育」「人事管理」などの人事の各施策の関連性を捉えて優先順位と影響度を見ていくのが「左右」であり、「現在」から「数年~十年後」を見据えていくのが「前後」だ。
その全体観を持つ「人事マネージャー」を育てる環境がなかなかないようだ。
ただ、「基幹的人事機能」ができていれば、人事部長が変わって「おもしろ人事」や基幹的人事機能の改良を行うくらいならば、大きなダメージにはならない。そうやって一年ごとぐらいに人事部長が変わっている会社もあるが、大きな混乱はなく人事が為されている。
もっとも痛いのは、安易に「基幹的人事機能」を根本から変えてしまうことだ。それが失敗したと見えるころにその人事部長は辞めている。社内には混乱が残る。
でも、新任の人事部長は、自分の存在意義として、「変えたい」のである。
変えていいものと変えてはいけないものをどう見極めるか、も人事部長の能力だけど、そこも難しいようだ。
僕にどのくらい見極める力があるのかはわからないが、ご依頼いただいた人事部長採用のお手伝いについては失敗は少ないように思う。
僕自身?、はい棚に上げました。僕の採用が成功だったか失敗だったかは僕自身はわかりませんが、その後に大混乱は招いてはいないと思います・・・。あれ?どうかな・・・。
西尾 太