コラム
成長?
12月になってしまった。外苑のいちょうも終わりだな。
ウエストを5cm縮めるという目標は、風前の灯だ。
先週は、人事プロデューサークラブ秋のゴルフコンペ。
まさかの主催者四分一さんの病欠にもめげず、また、Yさんの優勝を阻止することもでき(僕が阻止したわけではない)、楽しいコンペでした。参加者のみなさん、ありがとうございました。
さて、全国展開もされている飲食・アパレル・流通業様の人事制度構築をお手伝いする機会が増えている。
お店がある業態だ。
その過程で、経営者の方々ともお話しさせていただくが、
そこで紹介いただいた書籍に原田曜平氏の「ヤンキー経済」というのがある。
約2年前の本だ。
地元に根ざし、同年代の友人や家族との仲間意識を基盤とした生活をベースとする若者。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダーでマーケティングアナリストの原田曜平が提唱している。現代の一般的な若者の志向とされる都市部集中、車離れ、晩婚化、少子化とは異なる経済活動や行動様式を持つと定義され、仲間と同乗(ワンボックスカー)して車を使い、地元企業に勤めて週末は幼なじみとショッピングモールに出かけるなど、行動エリアが半径5キロメートル以内で完結するという人たちだ。
(コトバンクより引用)
そういうカテゴリーがあるんだなあと思っていると、
クライアントからこれに当てはまる多くの実際の事例を伺うに至り、
(これが、「へー!!」っていうような事例なんだ。
親が地元を離れてほしくないから、そんなに頑張って働かなくてもいいよって言っているとか、
何よりも実家の犬の散歩を優先するとか、
若くして子供ができたけど、お互いの両親が子供の面倒も経済的援助もしてくれるから給与は低くていいとか・・・・。
もっといろいろあるんだけど、僕らの世代、特に東京にいるとちょっとよくわからない価値観だったりする。
でもこれは無視できない現象だなとつくづく思うようになってきた。
雇用形態って、例えば総合職は全国転勤を前提とした、上昇志向のある人たちで、
地域限定職は、地元で働きたいワークライフバランス型の志向のある人たちだと想定するが、
その中で人事制度はそれぞれに上昇志向があることが前提だ。
人事制度はビジネスパーソンとしての成長のためのラダー(梯子)を示すものだ。
しかし、書籍や事例を伺うにつれ、「成長」というキーワードが必ずしも汎用的に当てはまらないのではないかと思い、昨今悩んでいる。
そういう時代に人事制度はどうあるべきなのか。
これからの世の中、同じ仕事をしていたら、創出する価値が変わらない仕事をしていたら、
給与は上がらない、場合によっては下がる。これは自明だ。はやくみんな気づいた方がいい。
でも、給与が上がらなくてもいい、それを前提としないというカテゴリーに
人事制度は何を問えばいいんだろう。
でも、クライアントの社員のみなさんは、成長志向がなくても、とてもいい人たちだ。
その人たちの幸せは、従来の「成長したら幸せになれる、かも」という価値観とは違うものだ。
うーん。
おそらく、生き方の、働き方の選択の幅を広げることなんだろうと今は思っている。
それは、なんとなく形成されている、正社員の総合職を頂点とし、
正社員地域限定職、有期契約社員、アルバイト・パートというヒエラルキーで考えてしまう悪弊をなくし、
(そもそも僕はそれはおかしいと以前から思っていたし、正社員とか正規雇用という呼び方も嫌いだし、正社員がよくて偉いわけでは決してないと思っていたけども)
それは「スタイルの違い」であると改めて認識し、そのスタイルごとの価値観を尊重して、「いい悪い」「上・下」という概念ではなく、それぞれが誇りを持って働ける仕組みを作っていくことだろう。
そして、そのスタイルの変更を容易にしながら、それぞれがそれぞれに働きたい働き方で働けるようにする。
価値観の多様性を反映し、それぞれの価値観が尊重される人事の仕組みを作っていくことが、
答えの一つなのかと思う。
成長を前提としないでいいかどうかはわからない。
「そういう産業を作らなければならない、そういう人たちが長く楽しく働ける仕組みを作らなければならない」という
クライアントの社長の言葉は、きっとその通りだ。
そうじゃなきゃ、日本が心配だ。