コラム
時間の感覚
最近はやらなければならないと思うことが多くて、時間が足りないと思うことが多い。一日が早い。
歳をとると時間が短く感じられると言うけど、それもあると思う。でも仕事に対する思いみたいなものあるんだろうと思う。
就職したての頃、実習や応援で自動車工場の現場で仕事をさせていただいたことがある。1回目はトラックのエンジンに出荷用オイルを入れる工程で、二回目はRV車のギアにある打痕(ギアに傷みたいなものがあるとかみ合わせた時にものすごい音がする)を見つけ出して手で削るという仕事だった。流れてくる仕事の量は多くて、それほど単純作業じゃないので最初のうちは仕事を覚えるのに必死だった。その時は時間の感覚はあまりなかった。(オイルの工程では、流れてくるエンジンの種類がたくさんあって、このエンジンには11リットル、あのエンジンには13リットル、バス用のエンジンには28リットル、北米向けには凍らない特別なオイルを・・、産業エンジンにはオイルを入れない・・・など覚えることがたくさんあった)
ところが仕事を覚えて要領をつかむと、もうまったく時間がたたない。ただひたすら休憩時間が来るのを待つ。そういうときはさらに時間がたたない。もう1時間ぐらいやったかなあ、と思って時計を見ると、8分ぐらいしか経っていない。仕事が終わる時間をひたすら待ちながら仕事をするのってつらいなあ、と心底思った。
その後いろいろな仕事をやったけど、やっぱり「週末が待ち遠しい」という時もあって、そういうときは一日一日がゆっくり動いていた。(休日はあっという間に終わるんだけどね)
最近は仕事がいろいろで、時間があっという間に過ぎていく。一週間もあっという間。やばいな、このままだとあっという間におじいちゃんだ。
「仕事好きなんだねえ」と言われることもあるけど、好きだと実感したことはあまりない。でも興味深いし、仕事をすることはそれほど苦ではない。今は独立しているから決まった時間に決まった仕事をする必要もない。(そのかわり土日だろうが夜中だろうがやらねばならないときはある)。たぶんこれは英語で言う「Fun」ではなく「Enjoy」なんだろうな。英語は苦手なのでほんとのところの意味はわからないけど、遊びでの楽しさと、仕事での楽しさ(というか興味深さ)は違う。仕事は決して遊園地で遊んでいる感覚ではない。
仕事で時間を短く感じられることは幸せだと思う。特に製造ラインでの仕事を経験したからかもしれない。そうなるまでに20年近くかかったけど。時間を忘れて仕事ができたら、それは充実している時間なんだろう。
でもね、時間を長く感じられる時って、ものすごく自分と向き合っていた気がする。いろいろなことが頭を廻っていたように思う。それも大切な時間だったんだろうなあ。ほんとに考えてたもん。考える時間はものすごくたくさんあったから。本質的なものはそういう時間で見えてくるのかもしれない。
・・・ということで、何事も良し悪し・・・。