2024.05.13
仕事における失敗は、どのくらい人事評価に影響するのでしょうか?今回は、このテーマについて掘り下げてみたいと思います。仕事の失敗には、大きく分けて3種類あります。「挑戦による失敗」「過失や怠慢によるミス」、そして「不慮の事故」です。挑戦には、失敗がつきもの。挑戦による失敗が人事評価にマイナスの影響を与えることは、基本的にはありません。想定したリスクの範囲内であれば、むしろプラスに評価されます。
仕事における失敗は、どのくらい人事評価に影響するのでしょうか?
今回は、このテーマについて掘り下げてみたいと思います。
仕事の失敗には、大きく分けて3種類あります。
「挑戦による失敗」「過失や怠慢によるミス」、そして「不慮の事故」です。
挑戦には、失敗がつきもの。挑戦による失敗が人事評価にマイナスの影響を与えることは、基本的にはありません。想定したリスクの範囲内であれば、むしろプラスに評価されます。
過失や怠慢によるミスは、当然、人事評価にマイナスの影響を与えます。
それが重大なことであれば、懲戒処分の対象になることもあります。
不慮の事故については、十分に注意をしていたことであれば影響はあまりありませんが、予見できていたにもかかわらず放置していた、早く手を打てば防げた、などの場合については、人事評価においても、懲戒においても大きな影響を与えます。
また、職務上のミスによる懲戒処分には、7つの種類があります。
処分の重さにはレベルがあり、以下のようになっています。
軽い
↓訓戒(くんかい)
↓譴責(けんせき)
↓減給
↓出勤停止
↓降格
↓諭旨(ゆし)退職・諭旨解雇
↓懲戒(ちょうかい)解雇
重い
「訓戒」とは、口頭による注意。「譴責」とは、始末書を提出させたうえでの厳重注意(ただし始末書の提出は強制できないとされています)。「減給」とは、本来ならば支給されるべき賃金の一部が差し引かれること。
「減給」については、労働基準法第91条によって限度が決められており、「1回の額が平均賃金の1日分の半額を超え、総額が1賃金支払期における賃金の総額の10分の1を超えてはならない」とされています。
たとえば、給料が30万円だったら、減給は3万円までと法律で決まっているのです。この減給処分までは、通常の評価が多少下がることはあっても、人事評価への影響はその評価期間に留まり、後々まではそれほど大きな影響はありません。
問題なのは、次の「出勤停止」以上の処分です。
減給も重く感じるかもしれませんが、出勤停止はその比ではありません。
「出勤停止」とは、一定期間の出勤を禁止されること。これはかなり重い処分です。
なぜなら出勤停止は「欠勤」扱いとなり、「労働契約不履行」にあたるからです。
会社員は、会社と労働契約を結んでいます。たとえば「週に5日、40時間働きます」という契約を結んでおり、この時間は労務の提供をしなければなりません。要は契約した日数や時間は働かなければならないのです。
出勤停止処分は「労務の提供」がその期間ありません。つまり「契約通り働かない」ということになるのです。
契約を破ると、どうなるのでしょうか。出勤停止が10日間だったら、会社は半月分の給料を払わなくてよくなります。月給30万円なら15万円。つまり半分に減ってしまいます。
それだけではありません。出勤停止は、契約通りの労務提供がなかったわけですから、たとえ1日でも人事評価に影響します。
たとえば、標準評価がAだったら、B以下の評価に下がってしまいます。
その結果、翌年の昇給が停止する、ということもあり得るのです。
多くの企業では、評価A以上が2〜3年間というのが昇格要件になっています。B以下の評価に下がると、2〜3年間は昇格が止まってしまうことまであります。
当然、賞与も減額されます。
給料が上がらない、昇格できない、ボーナスも下がる。しかも2〜3年間は、その影響が残り続ける。履歴にも残るため、その後のキャリアにも大きな影響を与えます。
失敗にもさまざまなレベルがありますが、「重篤(じゅうとく)な過失」と呼ばれるような重大なミスを犯すと、「出勤停止」あるいはそれ以上の重い処分が下されるかもしれません。
「降格」は、役職・職位などが引き下げられます。「諭旨退職」は、会社が一方的に解雇するのではなく、会社と従業員の両者が話し合い、合意のうえで退職処分を決めること。
ただし、同意ができない場合は「諭旨解雇」となります。
「懲戒解雇」は、場合によっては解雇予告なしに(労働基準監督署の認定が必要)企業側が一方的に労働契約を解消する、最も重い処分です。
会社に対して故意に不利益を与えるような行為をした場合には、懲戒解雇、あるいは諭旨解雇という、極めて重い処分が下されると考えたほうがよいでしょう。
懲戒処分やその影響は、会社によって異なります。懲戒処分を発令せず内々に済ませ、でも評価に反映する、という会社もあります。
会社によって影響度合いは異なりますので、一例としてお伝えしましたが、いずれにしても重大な過失は人事評価に大きな影響を与えるということは知っておいてください。
失敗は誰にでもあることですが、場合によっては取り返しのつかない事態に発展してしまうことがあります。ミスが起こらない仕組みをつくり、常にチェックを怠らないなど、細心の注意を払い、重大な事故につながらないように、未然に手を打つことが必要です。
挑戦による失敗は、基本的には人事評価にマイナスの影響を与えることはありません。
最初にこのように述べましたが、一概にそう言い切れないケースもあります。
それは、本音と建前が異なる場合があるからです。
どの会社でも経営者による年頭の挨拶などでは「変革が必要だ」「改革しよう」といった前向きな話をするものです。今のままでいいんだ、という人はまずいないでしょう。
変革や改革をするためには、これまでにない挑戦が必要です。
本気でそれを推進している企業であれば、
挑戦による失敗がマイナスの評価を受けることはないでしょう。
しかし、さまざまな企業でこんな話をよく聞きます。
「挑戦しろと言われたのに、失敗したらすごく怒られた」
「変革しろって言われたのに、それまでのやり方を変えたら評価が下がった」
そう、変革や改革というキーワードを使って話をしているだけで、
実際にはそうではないケースがあるのです。
ですから「挑戦しろ」という会社の言葉を真に受けてしまうのは危険です。
そういう場合には、挑戦による失敗が評価に重く響く場合があります。
とても残念なことですが……。
新しいアイデアを発案し、具現化しようとする創造的能力。
現状をよりよく変えていく改善力。
そして過去の否定もいとわず、新たな価値を生み、結果を出す変革力。
これらは、人事評価における重要なポイントでもあります。
事業をよりよくしていく挑戦は、積極的に行っていくべきでしょう。
ただし、失敗した場合のリスクを想定しておくことが不可欠です。
「3000万円の投資をします。うまくいけば、それが1億になります。ヘタするとなくなりますが、損失は投資した3000万以内でおさえます」
新しい挑戦をする際には、このようにリスクや損失額を想定したプランを示して、
どこまでの失敗なら許されるのか、事前に許容範囲を確認しましょう。
MBO(目標管理制度)を導入している会社では、通常の目標以外に「加点目標」を設けている場合があります。これは自主的に取り組んだことを加点するだけで、減点はしないという、社員の育成を重視した目標設定の方法です。
こういう仕組みがあれば、社員も安心して新しい挑戦に取り組めます。
ですが、どの企業にもこのような制度があるわけではありません。
勇気ある失敗を評価してくれる会社なのかどうか、それを見極めることも大切です。
仕事をしていれば、ミスは起こります。
挑戦には、失敗がつきものです。
だからこそ、どこまでのミスだったら大丈夫なのか。
失敗した場合には、どれだけの損失があるのか。
これらのポイントも押さえて、日々の仕事に取り組んでいきましょう。
次回に続く
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