2009年の開講以来、述べ5000人以上の人事担当者が受講し、「人事の原理原則を体系的に学べる」と人気の講座「人事の学校」がリニューアルしました。2022年5月18日より新たにeラーニングサービスを開始。PCやスマートフォン、タブレットなど各種デバイスで受講可能となるなど、人事担当者がより気軽に学習できるよう生まれ変わりました。本記事では、「人事の学校」主宰・西尾太にインタビュー。リニューアルの理由や人事担当者の皆さんへのメッセージをお伝えします。
――そもそも「人事の学校」とは、どのような教育プログラムなのでしょうか?
西尾 一言でいうと「どこの会社にもなくてはいけないし、どの人事担当者も知っておかなくてはいけないこと」をお伝えしている人事担当者のための講座です。というのも、誰でもできそうだけど、意外とできないのが、人事という領域だと思うんですよ。
たとえば経理だったら、伝票作成とかデータ入力、決算書をまとめるなど、明確な答えがありますよね。簿記の知識が役立ったり、会計士や税理士の知識も役立つと思います。
ところが人事というのは、明確な答えがないし、アナログに見えるし、曖昧。誰でもできそうに見えて、あまりできる人がいない。社労士の勉強をしても、人事ができるとは限りません。
それはなぜかというと、学びが体系化されていないから。
人事に関する、いろんな人の、いろんな講座はありますが、採用、給与、厚生、育成、評価といった人事の幅広い領域全体について体系的に学べる機会は、実はほとんどないんです。人事は、本当は体系があるのに、体系があることが認められていない分野なんですよ。
――たしかに人事全体について学ぶ方法って、よくわからないですね。
西尾 だから人事担当者の最初の状態って、「何から悩んでいいのかわからない」なんですよね。人事をやれって言われて、「採用はうまくいってないし、社員は辞めていくし、給料も適当に決まっていくし、社長は教育をやれと言ってるし、何からやればいいんだろう……」と。
僕も今では偉そうなことを言っていますけど、CCC(カルチュアコンビニエンスクラブ)で初めて人事に配属されたときは全然イケてなくて、何からやっていいのかわかりませんでしたから。
ただ、幸いなことに僕の場合は「伝説の人事」と呼ばれる良い師匠に巡り合うことができた。その上司と一緒に、採用、制度、労務、教育など、いろいろなことを経験しながら教わることができた。厳しく指導されて泣きながら勉強したおかげで、人事部長になることもできました。
その後、クリークアンドリバー社に転職して同じようにやってみたら、うまく運用することができました。そのときに思ったんですね。CCCとクリークアンドリバー社は全然違う会社だけど、人事の根本的なことは変わらない。人事には、絶対的かつ普遍的な体系があるんだって。
だけど、それを知らない人もたくさんいる。だから、「人事の学校」という講座を始めたんです。
良い上司に恵まれて学んだこと、自分の経験値、コンサルとしていろんな会社で見てきたことを凝縮して、体系化したもの。それが「人事の学校」でお伝えしている教育プログラムです。
人事の全体像をはじめとして、運用、企画、戦略まで、人事担当者にとって必要なことはすべてお伝えしていますから、初めて人事に配属された人も「何から悩んでいいのかわからない」状態から「これに対して悩もう」「優先順位はこうしていこう」という状態に進めます。
人事は悩み稼業なので、この講座を受けたからといって、悩まずに済むようになるわけではありません。でも、何を悩めばいいのかはわかります。「人事の学校」でやっているのは、人事担当者の皆さんが「適切に悩むための教育」ということかもしれません。
――対面型の講座だった「人事の学校」をeラーニングにリニューアルした理由は?
西尾 2009年から13年間、月2回の講座を続けてきました。述べ5000人以上もの人事担当者の方々に来ていただいて、僕も楽しかったのですが、コロナ禍になって講座のあり方を変えていかなければいけないなと、ひしひしと感じるようになりました。
それで2020年からオンライン講座に切り替えたのですが、オンラインでやるのなら「○月○日の何時から」といった形式である必要はないのかなと。もともとリアルな講座の補完としてeラーニングもやってはいたのですが、この機会により多くの人が学びやすい形態にすべきだと考え、eラーニングですべて学べるように全面的に作り直しました。
ただ、13年間やってきた講座の内容は、ほぼ変えていません。なぜかというと、この教育プログラムは、それだけ普遍的なんです。どの会社でも、どんな人事担当者にも必要なことをお伝えしていますから、時間とともに大きく変わるものではないですし、5年後、10年後になっても「あの内容はいらないよね」とはならない内容にしています。
リニューアルにあたって、世の中が大きく変わったこと、たとえば副業や在宅勤務など、雇用形態が多彩になったことで働き方も変わっていますので、新たな要素も増やしていますが、基本的な内容は、人事における普遍的なことをお伝えすることで一貫しています。
リアルな講座では、僕の講義とホワイトボードとテキストでお伝えしていましたが、今は通勤時間や休憩中にeラーニングで学ぶ人が多いと思います。ですからテキストも用意していますが、1コンテンツあたりおよそ10分にして、eラーニングだけですべて学べる内容にしました。
――他にも「人事の学校」ならではの特徴はありますか?
良いか悪いかは別として、合計24時間の講義を、13年間、1人の講師がすべて教えている講座は、おそらく他にはないと思います。これは良い面もあれば、悪い面もあると思います。1人の考えで教えているわけですから、自分では気をつけているつもりでも、何らかの偏りがあるかもしれないし、欠けているものもあるかもしれません、
ただ、採用は採用、教育は教育、給与は給与、労務は労務と、別々の講師から教わった場合、それぞれの講師の人たちの専門性は深く学ぶことができるかもしれませんが、人事の各分野の繋がりという点について学ぶのは難しいのではないでしょうか。
人事というのは各分野の繋がりがとても重要な職種なので、1人の講師からすべて学べる講座というのは、ほかにはあまりない、価値のあることなのではないかと考えています。
「人事の学校」の教育プログラムは、私が人事部長だったときにメンバーにお伝えしてきたことと、基本的には変わりありません。要は、1人の人事部長が、若手から主任さん、課長さんに対して「こういうことをしっかり覚えておいてね」とお伝えしているようなものです。
企業ステージによっては教育や制度の精緻さなど「うちにはまだ必要ない」ということもあるかもしれませんが、そういった知見も将来かならず必要になります。ですから「この内容はいらない」ということがないのも、「人事の学校」の特徴のひとつですね。
――「人事の学校」は、どのような人におすすめしたいですか?
西尾 すべての人事担当者におすすめしたいのですが、「ぼっち人事」の方には特におすすめしたいです。1人で人事をやっている人が、中小企業やベンチャーにはいっぱいいますよね。そういう人こそ、人事の基本を間違えてしまったら大変です。施策を打ち間違えたり、知識が偏ってしまったら、すべてが崩壊してしまいます。
人事の業務には、戦略、企画、運用・管理、オペレーションとありますが、それぞれの繋がりを考えないでやっている人を非常に多く見かけます。あるいは、変えるべきことがあるのに、変える気がない人もいます。やっぱりそれではいけないと思うんです。
人事は、半分はクリエイティブ職ですから、どう変えるのかってことを自ら主導していかなくてはいけない。人事が「こっちに行くぜ」と示さないと社員が惑います。人事がフラフラしていると経営も不安になります。当然、社員からも経営からも批判もされます。何かを変えるときも、知識が偏っていたら、まず失敗します。
よく「人事にはベストはない」と言われますが、ベターはあるんです。人事の全体像を理解し、体系を学び、普遍的な知識を身につければ、ベターな人事ができるようになります。
人事の本もたくさんありますが、労務に偏りすぎて楽しくないものか、最先端すぎるものが多いと思うんですよ。法律などについてだけ書かれた本は面白くないですし、Googleのような先進的な企業の先進的な施策だけ学んでも、普通の会社では無理だったりしますよね。
その中間にあたる、普通の会社で、普通にできて、ベターな結果が出せる、なおかつ人事について楽しく学べる。それが「人事の学校」が目指しているものです。
誰でもできそうで、実はできないのが人事ですが、体系化された学びも、ちゃんとできる秘訣もあります。人事部門内に学べる環境がある会社も少ないと思います。若手の方から主任さん、課長さん、経営者の方々まで、ぜひたくさんの人に人事の秘訣を知っていただきたいですね。
フォー・ノーツ『人事の学校』は
企業向けの人事担当者の学習プログラムです。
毎週、それぞれのペースで動画を見て、 簡単なテストに答える「だけ」で”共通言語”が身につく
2009年開講。過去に述べ5,000人以上の人事担当者が受講
ベースとなる知識の学習、実践による定着、スキルレベルの可視化などをワンストップで提供。
人事部のあるべき姿を見出す「俯瞰的視点」の掴み方から、人事担当者の育て方、新法律の対応の仕方まで、人事にまつわる基礎知識のすべてが学べます。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
人事1年目について、フォー・ノーツ代表の西尾がお話します。
1年目というのは、仕事についてもまだまだ分からないもの。
新人の人事は何をして、どんなことに気を付けるべきなのでしょうか。
明確な人事評価制度を持っている企業はほんの一握りだと言われています。
しかし社員の成長、ひいては会社の成長のためには、
評価基準を作り、人事評価制度を導入することが必要不可欠です。
ではそのメリットはどこにあるのでしょうか?
社員の育成というと「研修」を思い浮かべる方が多いですが、
実は研修よりも効果的な育成方法があります。
それは、現場を理解した上での評価制度の策定及び改善です。
新型コロナウィルスによる業績低迷で、多くの企業において給与支払いの負担が大きくなっています。給与を削減する対応策の一つが、従業員をある期間休ませる一時帰休。 今回は、この一時帰休についてその仕組みと特徴をご説明いたします。
第4次人事革命において最も重要なのは、「どこでも通用する人材」をつくる人事施策です。それができれば優秀な人材が集まります。「あの会社に入れば、どこでも通用する」というのは、どんな求人メッセージよりも強力です。今回は、フォー・ノーツ株式会社の代表であり『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、どこでも通用する人材=「超ジョブ型プロフェッショナル」のつくり方をお伝えします。
いままで受け身の姿勢で仕事をしてきた人事が、急に主体的に動かなければならない
仕事を任されたとしてもうまく動けないことがほとんどでしょう。
そうした時に「社外の人事のプロ」に依頼することで
これまでの「受け身人事」の性質から脱却することができるかもしれません。
いい人が採れない。多くの企業が直面するこの課題を解決するためには「求める人材像を明確にすることが必要」と前回お伝えしました。「新卒」にするか「中途」にするかも、「求める人材像」を考えるにあたって重要な要素の1つです。今回は新卒採用のメリット・デメリット、そして会社説明会で採用担当者がやるべき、ある重要なポイントについてお伝えします。
人事は受け身姿勢になりがちです。
しかしこれからの時代、受け身人事のままだと
仕事がなくなってしまう可能性があります。
ぜひ今回の記事で、「人事としての姿勢」を見直してみてください。