いま再び注目を集めている「ジョブ型雇用」や「成果主義」は決して新しい考え方ではありませんが、これからの働き方を考える中では重要な要素です。 その実現のためにはジョブディスクリプション(職務記述書)が必要とされています。しかし、ジョブディスクリプションの策定や運用には、様々な課題も想定されます。 「働き方」「雇用のあり方」「管理のあり方」「評価のあり方」「給与・処遇のあり方」といった「考え方」そのものをどこまで変えるのか、といったことをよく考える必要があります。 今回は代表西尾から、これからの時代の働き方や評価についてお伝えしていきます。
「ジョブ型雇用」は、今の時代に有効な確かな施策ではあります。
ただし、この「やり方」の導入には、「考え方」を整理する必要があると前回お話ししました。
これまで、多くの企業が考え方の整理なしにやり方に走ってしまい、結果、考え方は歪み、やり方が崩壊するケースを何度も見てきました。バブル後の成果主義や職務主義の流行などがそれにあたります。
結局、人事制度は少しずつ変化してきましたが、大きな変革ははっきりいってなされてきませんでした。
ジョブ型の対極に挙げられるのが「メンバーシップ型」です。これは、人材育成に関する考え方の違いとも言えます。大まかに言うと、スペシャリスト育成か、ゼネラリスト育成かということです。
どちらを志向しますか?
(こういった議論は20年前にもありました。「手に職がないとダメだよね」と。しかしスペシャリティは陳腐化の恐れがあり、また、いざという時に他に転用できなくなってしまう問題もあります。これらを踏まえると、「すべてジョブ型」はいかがなものか、と思います。)
もう一つ、ジョブ型の対極にあるのが「年功序列」です。積みあがるものとしての「能力主義」と相性がよく、給与を下げる考え方を基本持ちません。ですから、場合によってはいまのパフォーマンスといまの年収が合わなくなっていきます。
能力があっても成果を出さなければダメだよね、という考え方が成果主義です。「ペイフォーパフォーマンス」という言葉も20年前によく聞きました。
ジョブ型は、基本成果主義と相性がよく、ジョブごとに定められた「成果」を上げなければ、そのジョブからはずれ、給与も落ちますよ、というものです。
こういった考え方を社内で統一し、しっかり持ち続けることができるでしょうか?
「ジョブ型」を導入する場合、8階層10職種だと80通りのジョブディスクリプションの作成が必要です。100人いたら100通りのジョブディスクリプションが必要と言われるケースもあります。
しかし、そもそもなぜ「ジョブ型雇用」が必要と言われているのでしょうか。
「雇用」と言われていますが、雇用契約とはそもそも「労務を提供して賃金を得る契約」を指します。
「勤務時間・勤務場所が定められている」「会社には、人事権、指揮命令権がある」「労働者には、誠実勤務義務、職務専念義務がある」労働者性とは、そう定義されています。
(その他にも双方に権利や義務があります)
リモートワークと雇用契約が同時に存在することは、そもそも矛盾していると言えます。
労務の提供が見えない、勤務場所は指定できない、勤務時間も見えない。そのためここに来て、改めて「成果を見よう」「ジョブを明確にしよう」となっているのでしょう。
とすれば、「なぜ雇用契約なのか」という議論もあってしかるべきでしょう。
ロイヤリティや長期勤続、会社のためにどこにでも行く、いつでも取り組む。そういった姿勢を「雇用契約」という言葉に含むのであれば、それはジョブ型ではないでしょう。
「ジョブ型雇用」という言葉自体に矛盾があるとも言えるのです。
また、「成果を見よう」「ジョブを明確にしよう」とするだけならば、ジョブ型である必要もないでしょう。メンバーシップ型でもジョブ型でも、今年の(半年でも)ミッションと目標を社員各自が明確にすれば、リモートワークにおいても十分マネジメントできるはずなのです。
あとは、成果を上げたかどうかをどのように処遇に結び付けていくのか、になるだけです。
ただ、ここでも「考え方」をしっかり定義する必要があります。仕事のプロセスを細かくチェックしたいのか、目標を定めたらあとは社員の自主性に任せるのか。後者であれば、わざわざ仕事をしているか上司が確認する必要もなく、マウスが動いているか5分ごとにチェックするアプリも必要ありません。
つまり、「雇用契約である必要もない」ことになります。
なぜ雇用契約なのか、なぜジョブ型なのか?
「やり方」を検討する前に、自社の考え方をしっかり確認していただきたいと考えます。
これを私たちは、「人事ポリシー」と呼んでいます。いま、時代の変化に対して改めてこの人事ポリシーを再確認する時ではないでしょうか。
次回は、よりパフォーマンスを高める、自律的なジョブサイズ設定について考えてみます。
【記事の続きはこちら】
緊急提言! ジョブ型雇用は“本当に導入すべき?” 検討する際に気をつけなければいけないこと <第3回>
【前回の記事はこちら】
緊急提言! ジョブ型雇用は“本当に導入すべき?” 検討する際に気をつけなければいけないこと <第1回>
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
このたび、代表西尾の共著
「人事担当者が知っておきたい、10の基礎知識。8つの心構え。」(赤本)
が増刷となりました。
働き方改革を推進している現代社会において、いまだにブラックと言われる企業がなくならないのはなぜでしょうか?労働環境を整えるのは、人事の重要な課題です。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、ブラック企業について改めて問い直します。
学生が企業を「選択する」立場となった就職活動。しかし、多くの学生は選ぶ基準が分からずブランド力や知名度のある企業に流れてしまいがち。そんなときに試されるのが採用担当者の”営業力”です。
強い組織を構築する場合に欠かせないのは、コミュニケーションの活性化です。風通しを良くし、考えや意見が出やすい環境づくりが必要と言われています。しかし、それ以前にもっと重要なことがあります。今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、コミュニケーションの目的についてお伝えします。
バブル崩壊後、企業は採用を抑制し、ジョブ型雇用に切り替えようと試みました。
しかしその試みが上手くいった企業は少ないのが現状です。
ジョブ型雇用が注目を集める昨今、
会社は過去の教訓を活かしどのように動くべきなのでしょうか?
採用担当者は採用する側だから、優位に立場である。
そういった意識を持っている人事は少なくありません。
この少子化の時代、その意識を捨てて自社を売り込む立場の目線を持つことが大切です。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは、「45のコンピテンシーモデル」。これは人事担当者だけでなく、社員全員が理解していなくはいけません。
テレワークやDX対応、ジョブ型、70歳定年、早期退職、黒字リストラなど、今、人事の課題は山積みになっています。この「第4次人事革命」において、人事担当者がやるべきことは何なのでしょうか? そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、日本企業の人事施策の変遷を振り返りながら、歴史から学ぶべきことをお伝えします。