2018.12.14
企業理念の浸透がなかなか進まないのは、
社員とのコミュニケーションが上手くいっていないからかもしれません。
自分たちの伝えたいことをしっかりと伝えられるようになるためには、
どんなことに気を付けていればいいのでしょうか?
ある一つの分野に精通すると、自分の持っているイメージや知識量が基本的な水準になってしまい、表現が伝わりづらくなったり、コミュニケーションが一方通行になったりすることがよくあります。これはもちろん、人事であっても同じことです。
自分たちの表現や施策、意図が社員にとって分かりやすくなっているか。人事施策が上手くいかないときにはぜひ見直してみてください。
人事と社員のコミュニケーションを滑らかにするために必要なのは、
・伝えたいことをわかりやすいイメージで伝えること
・自分の言葉で理解してもらうこと
の2つです。今回はその2つを実行するためにどうすればいいかを具体的にお伝えします。
「社員が現在どんな意識で働いているか知りたい」。こんな時、「働く意識」や「仕事に対する姿勢」といった言葉でアンケートを取ったりしていませんか?こういった言葉は私たち人事にとっては馴染みがあっても、現場で働く社員にとっては漠然としたイメージしか湧かないことが多くあります。「どう答えればいいかわからないから、適当にお茶を濁しておこう」となってしまう可能性も十分にあるのです。
「でも、今更どんな言葉でアンケートを作ればいいかわからない……」。そんなときには、たとえ話を使ってみましょう。働く意識や仕事の目的といった話で代表的なのが「石切り職人」の話です。
ある広場に石の切り出しをしている4人の職人がいました。彼らに「何のために働いているんですか?」という質問をしたところ……
1人目「食うために石を切ってんだ!」
2人目「国で一番の石切り職人として仕事しているんだ」
3人目「立派な教会を作っているんです」
4人目「みんなの心のよりどころを作っているんです」
この中で一番理想的なのは、4人目の答えです。理由は簡単で、自分の使命やミッションというものをきちんと理解して、仕事に取り組んでいるからです。働く意識も前向きで、積極的な仕事ぶりが予想されます。
2人目、3人目も別に悪いわけではありません。3人目は目的を理解して仕事をしていますし、2人目もはっきりとした職業意識と誇りをもって仕事をしています。4人目ほどではないにせよ、前向きかつ健康的に仕事にとりくんでくれることでしょう。
問題は1人目です。「仕事は生活のため」と割り切っており、仕事そのものに目的を見出してはいません。こういった意識で働くのは生産性が悪いばかりでなく、労務リスクも大きくなってしまいます。
以上が「石切り職人」の話なのですが、このようなたとえ話を交えれば、人事の経験がない社員とも、スムーズなコミュニケーションが取れることでしょう。
もちろん人事の仕事は、社員とコミュニケーションをとって社員の意識を把握するだけではありません。4人の石切り職人のようにバラバラのスタイルやモチベーションを持った社員たちのベクトルを、同じ方向にしていくことも人事にとって大事な仕事です。これが意味しているのは、アンケートに「食うために仕事をしているんだ!」と答えた人にも、仕事そのものに目的を持ってもらわなければならないということ。そのためには、会社の価値観の根本でもある「企業理念」の浸透が欠かせません。
ただ、毎朝社員に暗唱させていても意味はありません。それは浸透ではなく押し付けているだけだからです。一部の社員にとっては親しみのない理念が繰り返される毎日にむしろ嫌悪感を抱かせてしまうかもしれません。そこで重要になってくるのが、企業理念を自分の言葉で理解してもらうということです。
この章では、企業理念を自分事として理解してもらうために必要なことを紹介していきます。各フェーズに共通して言えるのは、抽出したものを他の社員と共有することがとても大切だということ。例えば年次の近いメンバーを集めてミーティングを開き以下の施策を試してみるなど、自分の価値観と他人の価値観をすり合わせることを意識させてください。
・働く価値観の抽出・共有
まずは社員の個人個人が抱いている、仕事に対する価値観を抽出していきます。自分が仕事をしていくうえで大事にしていることや、将来成し遂げたいことをどんどんリストアップしてもらってください。内容は簡単なものでも構いません。とにかく限界まで出してもらうことが重要だからです。これをすると、自分でも気づいていなかったこだわりや、仕事へのモチベーションを知るきっかけになります。
・会社全体の価値観の抽出・共有
個人の価値観をはっきりとさせたら、次はその枠を会社にまで広げてみましょう。現在この会社が大事にしなければいけない軸、行動、価値観を、同じく限界まで出してもらいます。こうすることで、会社という組織全体の価値観が見えるようになってきます。
・行動指針を自分の言葉で語り、共有する
上で挙げてもらった2つの価値観。これを実現するためにはどんな行動が必要になるのか考えてもらうのがこのフェーズです。大切にすべきことややるべきことから、具体的に必要な行動を出せる限り出してもらってください。大切なのは自分の言葉で語ってもらい、「自分事」として感じてもらうということです。「企業理念を実現するためにはどんな行動が必要になりますか」といったアプローチを促すのも良いですよ。
・会社が提供している価値や何が求められているのかを抽出、共有
最後に自分たちが所属しているこの会社が、社会に対してどのような価値を提供しているかを抽出してください。社会における会社、その中の自分はどんな意識を持つべきなのかを理解してもらいましょう。日々の仕事に追われていると、社会という大きなものには目がいかなくなりがちです。しかし、会社の存在意義というのは社会に価値を提供すること以外にありません。社会と会社と自分。この視点を絶えず持ち続けることで、仕事そのものに対する目的も見失わずに済むようになるでしょう。
仕事に対する意識を変えるのに、理念の浸透ほど効果的な施策はありません。しかし実際にやってみると、こちらの言いたいことが伝わらなかったり、あるいは社員の言いたいことを理解してあげられなかったりと、コミュニケーションがうまく取れなくないことが原因で失敗してしまうケースが多々あります。そんなときには今回お伝えした方法を実践してみてください。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
人事ポリシーとは会社の「人」に対する考え方を表明したものです。
会社が抱える「人」の悩みの大半は、社員との間にある意識のミスマッチが原因です。
自社に即した人事ポリシーによって意識をすり合わせることができれば、
複数の課題が一気に解決することも珍しくありません。
「しらけ」を感じた社員は、
仕事へのモチベーションやパフォーマンスを大きく低下させます。
最悪の場合、そのまま退職につながることも……。
今回の記事では、社員に「しらけ」を感じさせないために必要なことをお伝えします。
人事制度の改革には反対意見がつきもの。
私たち人事はその反対意見に対して
どのように対処していけばいいのでしょうか?
今回は人事制度改革を行うにあたり、
意識しておくべきことをご紹介いたします。
コロナ禍で否応なく進む在宅勤務制度。しかし、その一方で接客業など、どうしても出勤が必要な職種があるのもまた確かです。同じ社内に在宅勤務ができる職種、できない職種が混在している場合、しばしば人事に寄せられるのが「自分は(職種上)在宅勤務ができないのに、同じ社内で在宅勤務している人がいるのは不公平だ!」という声。 さて、そうした声が起こる理由は何なのか?人事担当者としてはどのように対処すべきか考えてみましょう。
総合人事コンサルティングのフォー・ノーツ株式会社は、代表取締役社長・西尾太の著書『この1冊ですべてわかる 人事制度の基本』出版記念特別セミナー【聞いた後でジワジワくる‼西尾太の「地味な」人事の話】を2022年11月17日、TKP東京駅日本橋カンファレンスセンターにて開催いたしました。本記事は、このセミナーの内容を再構成・加筆してお届けしています。今回のテーマは「制度づくり」。職位制度・評価制度・給与制度の大事なポイントを簡単に説明します。
コロナ渦という前代未聞の事態に見舞われた今、人事の課題はますます山積みしています。人事が強い会社でないと、これからの荒波を乗り越えていけません。人事が強い会社とは、どんな特徴があるのか?また、どのようなメリットをもたらすのか? 今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、人材育成の考え方や方法を解説します。
採用活動というと面接を思い浮かべる方が多いと思いますが、
実は面接で得られる情報はそんなに多くないことが分かってきました。
これからは、客観的な評価ができる「適性検査」が採用活動の主役です。
人事は、様々な情報を取り扱います。
若手人事だとその万能感かプレッシャーからか、「勘違い」を起こすこともしばしば。
今回は、若手人事がうっかり陥ってしまう「勘違い人事」のパターンをご紹介します。