人事は、コミュニケーションが不可欠となる職種です。相手の話にしっかりと耳を傾けられる「傾聴力」は、特に重要となります。「質問」と「共感」のスキルを磨き、傾聴力を高めましょう。

人事の基本は、「人の話を聞くこと」です。人員計画や人事異動では経営者をはじめ各部門の管理職や各社員、採用面接では応募者、評価会議では評価者、メンタルヘルスの対応では社員の家族から話を聞くことも必要になったりします。
しかし、ただ単に質問をすれば、相手が話をしてくれるわけではありません。話をしたがらない人もいれば、話すのが苦手な人もいます。受動的な態度では、そういう人たちから話を聞き出すことはできません。そこで必要となってくるのが「傾聴」のスキルです。
傾聴とは、積極的に関心を持って注意深く話を聞くことを言います。傾聴力のある人は、相手の話をよく聞き、理解を示し、信頼を得ます。自分より経験の少ない人や違う考えを持っている人の話でも最後まで聞き、理解しようと努めます。自分の価値観を押しつけたり、話の途中で否定したりせず、まずは相手に「受け止めてもらえた」という安心感を与えるのです。
傾聴力は、人事担当者に限らず、マネージャー以上のビジネスパーソンには不可欠となるコンピテンシーです。相づち、うなずき、言い換え、要約など、細かいテクニックを駆使して会話に挟みこみ、相手を理解しようとしていることを言葉や態度で示します。
これらは誰もが身につけることができる、体系化されたコミュニケーションスキルです。「質問のスキル」と「共感のスキル」を理解し、磨き、傾聴力を高めていきましょう。
質問のスキルには、①限定質問(クローズ質問、特定質問ともいう)、②拡大質問(オープン質問ともいう)、③関連質問の3つがあります。それぞれ見ていきましょう。
① 限定質問
相手が「はい」「いいえ」、あるいは短い言葉で答えられるような質問です。こちらの理解が正しいかどうかを確認したいとき、特定の返答がほしいとき、相手の口が重いときに使用すると特に効果的です。
例1)他の部署に異動したいと思いますか?
例2)研修は好きですか?
例3)コミュニケーションがうまくいかないことに原因があるのですか?
② 拡大質問
相手が答えるために考える必要がある質問です。相手の考えを手助けするとき、相手の状況や気持ちについて新しい情報を知りたいとき、相手が気楽に接してくれるような状況で使用します。
例1)〇〇さんは、この件について、どのようにお考えですか?
例2)どんなことが難しいですか?
例3)では、どうしたらよいと思いますか?
③ 関連質問
第三者の意見や事例、あるいは関連する情報を引き合いに出しながら、相手の答えを求める質問です。直接的な聞き方では相手の感情を害する可能性がある場合に、相手に連想させることで質問に答えやすくしたいときにも有効です。
例1)〇〇ような状況の場合、あなたならどうしますか?
例2)仮に1つしか選べないとしたら、どちらを優先しますか?
例3)この問題が解決するとしたら、予算の確保はできるでしょうか?
① 同意する
相手の発言に対して、自分も同じ意見だと伝えます。
例1:〇〇さんの気持ちは、よくわかります。
例2:なるほど、同感です。
例3:はい、私も同じように考えていました。
共感していることを相手にしっかりと伝えるためには、「相づち」や「うなずき」も重要です。相手が言ったことに対して、「なるほど」「はい」などと相づちを打つ、深くうなずく、何度もうなずく。それによって共感の気持ちがより相手に伝わります。意見が違っていても、まずは受け止めることが相互理解の第一歩となります。
② 理解を示す
相手の話を真剣に聞いていることを伝えます。
例1:〇〇さんは、そういう経験をされたのですね。
例2:それは大変でしたね。
例3:はい、〇〇さんのお考えがよくわかりました。
これらの言葉は、相手が否定的な発言をしたときに使うと有効です。相手が強い反論をしてきた際には、少し間を置くことで、きちんと受け止めていることを態度で示すことが重要になります。
③ 言い換える
相手の発言を要約したり、自分の言葉で言い換えます。
例1:つまり、〇〇ということですね。
例2:〇〇という理解でよろしいでしょうか
例3:なるほど、〇〇なのですね。
「〇〇ということは、□□ということなのですね」など、理解をしていることを示す場合に使います。このスキルは、相手の発言に対して部分的にしか同意できないときにも使用できます。真っ向から否定せず、相手の気持ちを害することなく、強調や論点に変更をする際にも有効です。
④ 発展させる
相手の発言に付け加えて、自分の考えを述べます。
例1:それならば、〇〇することもできますね。
例2:でしたら、〇〇をしてみるのはいかがでしょうか?
例3:〇〇なら、こういう方法もあります。
相手の発言に対して実例や解釈を加えたり、他の題材と関連させたりすることで相手の発言内容を強調し、話を発展させる場合に使います。膠着した議論を打開する場合など、話を先に進めるときにも有効です。
人事担当者は、経営者、管理職、社員、応募者、場合によっては、社員の家族から話を聞くこともあります。どんな相手からも話を聞き出すことができなければ、人事の仕事は務まりません。上記の例を参考に、質問や共感のスキルを身につけ、傾聴力を高めていきましょう。

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。

ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!

テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。

人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
人事には、人員計画・配置・採用・給与・厚生・育成・評価といった分野と、それぞれに戦略、企画、運用、オペレーションという機能があり、非常に幅広い分野の領域に関わる職種です。人事担当者は、どのように学習し、キャリアを構築していったらいいのでしょうか。本記事では、新任担当者から主力メンバーになるまでのキャリア構築の方法を「人事の学校」主宰・西尾太が解説します。今回のテーマは「人事学習のよくある勘違い」です。
不正やパワハラなど、内部告発によって明るみに出る企業の不祥事。内部告発はとても勇気のいる行為ですが、人事に影響するのか、どんなデメリットがあるのか、気になる人も多いでしょう。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、内部告発に対して会社や人事担当者がすべきことを解説します。
様々な企業で支給されている「手当」。
中には手当を求人の売りにしているのも見かけます。
手当に対する考え方を今一度見直してみましょう。
上層部と現場の板挟みという人事担当者って多いですよね。
この状態ではどんな施策を打っても現場で働く社員との溝は深まるばかり。
場当たり的な人事制度ばかりになってしまい、「ブレて」しまうからです。
ブレる人事制度を生み出さないためには、人事ポリシーの策定が欠かせません。
働き方には4つのパターンがあります。
4つのパターンの中でどれを選ぶのかはあなた次第。
自分の理想の生き方と照らし合わせて、働き方も決めていきましょう。
JBpressにてビジネスパーソン向けのWebコラムを12月11日(水)よりスタートいたしました。
人事は、人員計画・配置・採用・給与・厚生・育成・評価といった分野と、それぞれに戦略、企画、運用、オペレーションという機能があり、幅広い分野の領域に関わる職種です。一領域の人事担当者からマネジャー、人事責任者になるには、何をどのように学べばいいのでしょうか?本記事では、担当者レベルから人事責任者を目指すために重要なポイントを「人事の学校」主宰・西尾太が解説します。
人事異動を拒否する人が稀にいます。拒否するにはそれなりの理由があるはずです。人事部はどのように対応したらいいのでしょうか? 今回は「人事異動」シリーズ第2回。『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、人事異動を拒否された際の正しい対処法について紹介します。