FOURNOTES

第26回 人事目線から見た「1on1」の意義と意味

1 on 1は「部下を育てるための時間」 あなたの会社では「1 on 1」をやっていますか? 「1 on 1」 […]

1 on 1は「部下を育てるための時間」

あなたの会社では「1 on 1」をやっていますか?

「1 on 1」とは、革新的なベンチャー企業や有名企業が集まる米国シリコンバレーでは当たり前の習慣とされている、上司と部下による1対1の対話です。

グーグル、ヤフー、メルカリ、楽天、日清食品、パナソニックなど、国内外を問わず、先進企業や人気企業であるほど、積極的に取り組んでいます。

といっても、上司が部下に報告を求め、指摘するような「管理のための時間」ではありません。「1 on 1」の目的は、部下の成長を促すこと。部下の現状の悩みに寄り添いながら、部下の能力を引き出す、いわば「部下を育てるための時間」です。

多ければ週に1回、最低でも月に1回は実施することが重要とされており、1回の実施時間は30分程度。中には、毎週1時間かけている企業もあります。

では、なぜ人気企業ほど「1 on 1」に熱心に取り組んでいるのでしょうか?

 

人気企業が「1 on 1」に熱心に取りくむ理由

その目的はさまざまですが、最も大きなもののひとつは、若手が辞めないようにするためです。

「1 on 1」は、もともとグーグルやインテル、マイクロソフト、アドビシステムといったシリコンバレーの人材獲得競争が激しい人気企業から始まっています。日本でもヤフーがいちはやく導入しました。

人気企業では、その会社でキャリアを積んでいくことのメリットや、上司自身がキャリアアップしていく姿を常に見せていないと、若手が辞めてしまいます。

若手の教育という意味合いももちろんありますが、それ以上に、実は離職を防げるという効果が高いのです。

「最近うれしかったことある?最近困ったことある?」

「どんなことにやりがいを感じた?」

「チームの状況はどう思う?」

「困っていることや悩んでいることはある?」

「今後のキャリアはどうしていきたい?」

部下の悩みを知り、真摯に相談に乗り、コミュニケーションを深めながら、部下の能力を上手く引き出せるように導いていきます。

そのため「1 on 1」が終わったあとに、「部下が話してよかった!」と思えることが、第1のゴールになります。

 

「1on 1」の大事なポイントは、部下の成長度合いによって接し方を変えること

上司にとって重要なのは、部下の成長度によって接し方を変えることです。社会心理学者・三隅二不二さんの「PM理論」では、上司を4つのタイプに分類しています。

① 説得型……「成果」と「人の気持ち」、どちらも重視できる

② 指示命令型……「成果」を重視し、「人の気持ち」はあまり考えない

③ 参加型……「人の気持ち」を重視し、「成果」はあまり考えない

④ 委譲型……「成果」と「人の気持ち」、どちらもあまり考えない

「説得型」は、「なんでこれやるかわかるか?」「できたか?」「やったな、よかったな」と、仕事の目的をきちんと説明し、部下の気持ちにもしっかり寄り添うタイプ。

「指示命令型」は、「目的? いいから、まずやってみせろ」「手を動かせ」といった、まず行動することを優先するタイプ。

「参加型」は、「大丈夫? 元気?」「飲み行こうか!」という、成果より気持ち型。

「委譲型」は、「よきにはからえ」と、部下に仕事を丸投げしてしまうタイプです。

一般的には「説得型」が理想のリーダー像とされ、正反対の「委譲型」が一番ダメなタイプとされていますが、実は一概にそうとは言いきれないのです。

部下がまだ新人で何もわからないときは、とにかく仕事をさせ、経験を積ませる「指示命令型」のほうが、成長スピードが速い場合もあります。

部下が育ってきたら「なんでこれやるかわかるか?」「できたか?」と、いちいち声をかける「説得型」は、うっとうしかったりもします。

むしろ気持ちのメンテナンスだけする「参加型」のほうが心地よかったり、いっそ何も口出ししない「委譲型」のほうが、伸び伸びと仕事ができて成長しやすかったりもします。

 

「忙しい」は「できない理由」にはならない

マネジメントやコミュニケーションの方法は、部下のタイプや成長度合いによって変化させる必要があります。それは「1 on1」でも一緒です。

部下が成果を出せるようになったら、メンタルだけを気にかけたり、それも自己管理できるようになったら、遠くで見守るのもひとつの方法です。

そのためにも、まずは部下とのコミュニケーションを深めていくことが大切です。

「忙しくてそんなことやってるヒマないよ」

伝統的な古い体質の会社ほど、そんな風に言っている管理職が少なくありませんが、残念ながら今はもうそういう世の中です。忙しい会社ほどやっているのですから、「忙しくてできない」というのは言い訳になりません。

日本では少子高齢化が果てしなく進み、どの会社も採用難で苦しんでいます。人気企業ですら、人材獲得にこれだけ必死になっているのです。優秀な若手は引く手あまたです。上司から積極的に寄り添っていかないと会社に残ってくれません。

人事の立場からすれば、「1 on 1なんて忙しくてできない」といっているような人は、管理職から外れてもらうしかありません。

時間がないから、部下の育成なんてできない。それでは今の時代、管理職失格です。

もしまだこの制度を導入していないのならば、自分自身のためにも時間を割いて、部下と真摯に向き合ってみましょう。それが時代の流れです。

 

次回につづく

人事で一番大切なこと

人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。 なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?

人事制度の基本

中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。

評価基準

ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!

超ジョブ型

テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。

プロの人事力

人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン

人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開

人気の記事

最新の記事

類似記事