2024.05.29
「ベテランはリストラの対象になりませんか?」ある人からそう聞かれました。今回は、この質問に答えてみたいと思います。ベテランとは、基本的には褒め言葉です。「あの人、ベテランだよね」「さすがだよね」と言われるのは、技術・技能に長けていて、知識も豊富で信頼が置ける人ですよね。
「ベテランはリストラの対象になりませんか?」
ある人からそう聞かれました。今回は、この質問に答えてみたいと思います。
ベテランとは、基本的には褒め言葉です。「あの人、ベテランだよね」「さすがだよね」と言われるのは、技術・技能に長けていて、知識も豊富で信頼が置ける人ですよね。
たとえば、商品を売る技術・技能に長け、長年の経験によって培った豊富な知識があるベテラン営業マンであれば、業績にも繋がっているはずです。当然、会社からは今後も必要とされるでしょう。
ベテランという言葉を辞書で引いてみると、「経験を積み、その道に熟達している人。老練な人。ふるつわもの」とあります。経験を積み、その道に熟達している人なら、たとえ50代であってもリストラの対象にはなりにくいです。
ただし、「ベテランはリストラの対象にならない」とは言い切れません。その技能や知識が、これからも使いものになるかどうか次第、ということになります。
たとえば「俺、エンジンのキャブレーターの修理が得意なんだよな」という職人さんがいたとします。キャブレーターとは、燃料を気化する装置です。一昔前までは一般的な自動車部品でしたが、今の車にはキャブレーターはほぼありません。
ITの世界は特に変化が激しいです。「CG一筋30年です」という人がいても、その技術が変わってしまえば、まったく通用しなくなってしまいます。
そのベテランの技が今後も通用するものであるか。その人が持っている技術や技能、知識が「もういらないよね」というものになっていないか。ここがリストラにおける非常に重要なポイントになります。
また、同じ技術を持っている人が2人いたら、それを30年かけてやっている人と、10年で覚えた人が同じアウトプットだったら、10年の人のほうがいいわけですよね。
ですから「ベテランはリストラの対象になりませんか?」という問いには、「なるかもしれません」という回答になります。
長年培ってきた技術・技能があり、会社で信頼され、一目置かれていたとしても、時代が変わり、やり方が変われば、一気にリストラの対象になってしまうのです。
プロ野球の落合博満さんのリーダー像を描いた『嫌われた監督 落合博満は中日ドラゴンズをどう変えたのか』(鈴木忠平/文藝春秋)という本がビジネスパーソンからも注目を集め、12万8000部突破というベストセラーになっているといいます。
私も非常に興味深く読みましたが、落合監督は谷繁選手や立浪選手といったチームの要となってきたベテランであっても、何も言わずにレギュラーから外します。落合監督には落合監督なりの考え方があるのですが、ベテランだからといって容赦しません。
これは一般の企業であっても同じでしょう。たとえ優秀なベテランであっても、同じ技術・技能を持っている若手がいたら、より若い人に取って代わられかもしれません。
ベテランだからといって、これまでと同じように仕事を続けていたら、若手に追い抜かれるかもしれません。技術・技能や知識も古くなるかもしれません。
ベテランも常に技術や技能をブラッシュアップして、時代に合わせていくことが必要です。少なくとも若手より多くのものがつくれるとか、より良いものがつくれるとか、他者より優れた面を持っておかないとリストラの対象になります。
情の厚い企業でしたら会社に多大な貢献してきたベテランに対してそこまで厳しいことはしないかもしれませんが、「多くの中高年を今後もずっと抱えきれていけるのか?」という別の問題があります。なぜなら中高年は給与が高いからです。
黒字リストラをしている企業も、別にリストラをしたくてしているわけではありません。高い給与に見合ったパフォーマンスを発揮しない中高年を抱えていくことが難しくなってしまったから、早期退職・希望退職という制度を導入しているのです。
こうした状況も踏まえて考えていくと、たとえ優秀なベテランであっても、今後のキャリアパスについて改めて考えてみる必要があるでしょう。
プロ野球の選手も、現役を続けるのか、コーチや監督になるのか、あるいは引退して解説者になるのか、ラーメン店を開くのか、決断を迫られる時期がやってきます。これはビジネスパーソンであっても同じなのです。
自分はプレーヤーとして仕事を続けていきたくても、老眼で近くが見えず作業効率が落ちたら、近くが見える人に仕事を取られます。ITを使いこなすのが遅くて作業に時間がかかるようなら、その仕事はもっと早くできる若手に任されます。
プロ野球のスーパースターであっても、ベテランになって成績が落ちたら、代打を出されたり、レギュラーから外されたりするのです。引退勧告される場合だってあります。一般企業であっても、それは変わらないのです。
新しいスキルを身につけ、新しいものをつくり、自分をブラッシュアップしながら、プレーヤーとして現役を続けるのか。
自分のスキルや知識を体系化し、下の者たちに教え、自分よりも仕事ができる人材をつくって引退するのか。
スキルは若手にかなわなくても、彼ら・彼女らの気持ちがわかるのなら、マネジメントに特化し、監督やコーチになるなど、スキルセットをチェンジするのか。
プロ野球選手が引退後は解説者になるように、自分の技術や技能、知識を活かして、広く世の中の役に立てるよう、コンサルや顧問などの副業を始めるのか。
あるいは、それを本業にしたり、会社を辞めてラーメン店などを開くなど、起業や独立、転職をして、まったく新しい道を歩むのか。
自分は今後、ギアチェンジをどこに持っていくのか。
これは私たち50代にとって極めて重要な課題です。
ベテランだからといって、リストラされないとは限りません。
自分は今後どこで勝負するのか。改めて考えてみてください
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
新連載「人事の超プロが明かす、リストラ時代の生き残り戦略」 2021年4月1日、高年齢者雇用安定法が改正されました。これによって「70歳までの就業機会の確保」が企業の努力義務になりました。 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。
中高年の皆さん、暇ってありますか?もし暇な時間があるのでしたら、その活かし方こそが生きる道となります。中高年になると、仕事はそこそこでいいかなと考え、プライベートを充実させようとする人が増えてきます。それはそれで、いいことだと思うのです。プライベートが充実していれば、「暇」ではなくなります。
中高年のリストラが止まりません。東京商工リサーチ によると、2021年の上場企業における早期・希望退職の募集人数は約1万6000人。前年の2020年は約1万9000人でした。2年連続で1万5000人を超えたのは、ITバブル崩壊後の2001〜2003年以来だといいます。リストラを実施している企業は、赤字とは限らず、好業績でも早期・希望退職を募っているため、「明日は我が身」と不安になっている方も多いでしょう。では、会社での自分のポジションが、どうであったらヤバイ、どうであったらセーフなのでしょうか。今回は、その目安について、お伝えしたいと思います。
50代のビジネスパーソンの皆さんに質問します。通勤時間は何をされていますか?まさかゲームをしてないですよね…。なぜこんな質問をしたのかといいますと、管理職研修をしていると、伝統的な会社でも上場企業でも新聞を読んでない人が多いのです。新聞、特に日経はビジネスパーソンにとって読んでいるのが当たり前のはずですが、読んでいない人がほとんど。ゲームを楽しむのもいいですが、私たちがやっているのはビジネスです。
50代になってくると、若い社員との世代間ギャップを感じることが増えてきます。世間話でテレビの話をすると、まったく通じないことも多く、「テレビ見ないんで」と言われて愕然としてしまったりします。これは私だけではないと思います。職場で世代間ギャップを感じている中高年の方は多いのではないでしょうか。そこで今回は、「世代間ギャップを超える中高年の技」についてお伝えしたいと思います。
年収とパフォーマンスが一致していない人は要注意 コロナ禍以前から増えてきた、45歳以上の早期退職・希望退職という名のリストラ。その候補となっているのは、パフォーマンスより年収が高い人です。それはどういうことなのか、詳しく説明しましょう。