2024.05.22
のハラスメントが、深刻な社会問題になっています。2019年5月には、パワハラを防止するための「パワハラ防止法(改正労働施策総合推職場進法)」が成立。大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から、パワハラ防止のための措置が義務づけられました。これによって必要な措置を講じていない企業は、是正指導の対象となります。そこで今回は、パワハラやセクハラの「加害者」にならないように、人事の立場から防止策をお伝えしたいと思います。
職場のハラスメントが、深刻な社会問題になっています。
2019年5月には、パワハラを防止するための「パワハラ防止法(改正労働施策総合推進法)」が成立。大企業では2020年6月1日から、中小企業では2022年4月1日から、パワハラ防止のための措置が義務づけられました。これによって必要な措置を講じていない企業は、是正指導の対象となります。
そこで今回は、パワハラやセクハラの「加害者」にならないように、人事の立場から防止策をお伝えしたいと思います。
パワハラとは、ひと言でいうと「いじめ」です。
殴る蹴るなどの暴行を働く、暴言を吐く、無視をする、遂行不可能な業務を強制する、仕事を与えない、職場での優位な立場を利用してプライベートに立ち入る……。
パワハラにもさまざまなケースがあり、上記のような明らかにハラスメントに当たる行為ではなくても、部下を注意しただけでパワハラとして訴えられるケースもあります。
何がパワハラで、何がパワハラではないのか。
そのように悩んでいる人も多いでしょう。
部下を育てるためには、ときには厳しく注意することも必要です。それが相手のためを思ってやっていることだと客観的に判断できれば、人事はパワハラとは考えません。
しかし「ストレスが溜まっていたから」「ムカついたから」など、自分のためだけに部下を叱責(しっせき)したり、同僚に悪意のある行動を取った場合には、パワハラと判断します。
相手のためか、自分のためか。
これがパワハラか、そうでないかの基準です。部下を叱ろうとするとき、同僚に言葉を発しようとするとき、一度立ち止まって、自分の心に問いかけてみてください。
また、仕事における「行動」に対して指摘することは業務上の適切な範囲内といえますが、「人格」や「性格」など、本人の意思だけでは変えることが難しい部分を攻撃することも、パワハラと判断するケースが多いです、
パワハラは、感情によって起こります。誰かを「嫌い」という感情が、いじめを引き起こしてしまうのです。
人間である以上、「嫌い」という感情を持つのは仕方がないことです。私自身も誰かを嫌いになることはあります。それをなくすことは難しいでしょう。
でもだからこそ、部下や同僚に対して「嫌い」という感情を持ってしまったときには、自分自身でセーブするしかありません。
嫌いな相手であっても感情を抑えて、公正な態度で接することができれば、パワハラに当たる行動や発言を防ぐことができます。
それができない場合には、人事に相談してください。
「自分はパワハラをしたくない。いじめもしたくない。でも、どうしても嫌いという感情が湧いてきてしまう。このままお互いが一緒にいるのはよくないから、異動なり、転勤なりをさせてもらえせんか?」
このように自分の気持ちを正直に打ち明けてみてください。今はパワハラに対する社会の目も厳しくなっています。人事担当者も「そうはいっても仕事なんですから我慢してください」などといってしまったら、職場で何が起こるかわかりません。真剣に受け止め、なんとしてでも対応してくれるはずです。
感情は、自分ではどうすることもできません。
嫌いなものを「好きになりなさい」といっても無理があります。
しかし、それによって誰かを傷つけてしまわないように、
自分が「加害者」になってしまわないように、
自らパワハラを防止する対策を講じていきましょう。
一方、セクハラはほぼ「勘違い」が引き起こします。自分なら許されると勘違いした発言や行動がセクハラだと訴えられるケースがほとんどです。
セクハラは痛いです。就業規則上の懲戒処分の対象となり、職場での地位や信用を失うだけでなく、法的責任を問われる可能性も高いです。
パワハラはよっぽどひどくなかったら、ある程度の注意で済む場合も多いのですが、セクハラに関しては、人事もどうすることもできません。
なぜなら、セクハラには明確な基準がないからです。
相手が不快に感じる行為をしたこと。これがセクハラの定義とされていますが、「不快」に感じることは、人によって基準が異なります。自分には性的な発言や行動をしているつもりは全然なくても、相手がそう感じたら、それはセクハラになるのです。
たとえば、女性社員に「髪型を変えたね」「今日の服かわいいね」と声をかけただけでも、相手が不快に感じたら、それはセクハラに当たります。
「○○ちゃん」と呼ぶだけでも、セクハラになるかもしれません。
それがどのような場面で起こるかというと、「自分はこの子と仲がいいんだ」「俺は好かれているんだ」「だから許されるんだ」という、間違った自己認識をしている場合です。こうした「勘違い野郎」が、セクハラ事件を引き起こしてしまうのです。
セクハラは、行為そのものではなく、相手の感情や価値観が基準になります。
Aさんが許されたことでも、Bさんがやったらセクハラになるのです。
ですから、とにかく気をつけなければならないのです。
あとは、単純に脇が甘いケースです。飲み会で卑猥(ひわい)な話をした、身体を触ったなど、時代錯誤もはなはだしい性的な言動で訴えられる人が今も少なくありません。異性と2人で飲みに行くこと自体がセクハラになる可能性大。そういう認識が必要です。
セクハラは男性だけとは限りません。
女性の上司が男性の部下に対して「付き合いなさいよ」と強引に交際を迫る、「あなた彼女はいるの?」としつこく聞く、お酌をさせるなど、数はそれほど多くありませんが、男性から女性がセクハラで訴えられるケースもあります。
セクハラの原因はほぼすべてが勘違いですから、女性社員にセクハラ教育をしている会社もあります。女性にあまり慣れていない男性社員が多い職場では、女性社員にボディタッチを禁止している会社もあります。女性に慣れていない男性は、ちょっと親しくされただけでも「自分に特別な感情を持っている」と勘違いして、ストーカー行為になどに走ったりしてしまうことがあります。それを防ぐために、勘違いさせてしまうような思わせぶりな態度はNGと教えているのです。
最近はセクハラに対する教育を行う会社も増えてきましたが、残念ながら決定的な防止策がないのが現状です。
セクハラは、とにかく「自衛」するしかありません。
自分は好かれている、自分なら許されるといった勘違いをしないように気をつける。
職場では、あらゆる言動がセクハラになる可能性を考慮する。
世知辛い話ではありますが、そのように心得てハラスメントを防止していきましょう。
次回に続く。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
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