2024.02.13
2021年は、黒字リストラが2020年の1.7倍に増えました。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光、博報堂などの上場企業を中心に希望退職・早期退職が実施され、1万人以上が退職に至っています。今後もさらに増えていくかもしれません。
2021年は、黒字リストラが2020年の1.7倍に増えました。日本たばこ産業、KNT-CTホールディングス、LIXIL、オリンパス、アステラス製薬、藤田観光、博報堂などの上場企業を中心に希望退職・早期退職が実施され、1万人以上が退職に至っています。今後もさらに増えていくかもしれません。
では、実際にリストラを告げられてしまったら、どうしたらいいのでしょうか?
そこで今回は、中高年のリストラ回避法をお伝えします。
会社の業績が悪くなったり、年収の高い中高年を減らすためのリストラが始まったら、まずは「お辞めになりませんか?」と退職勧奨を受けます。
会社は、社員を簡単にクビにはできません。一方的に「辞めてください」と伝えるのは、不当解雇にあたるので違法になります。しかし「今だったら退職金をちょっと積みますよ」と合意を求めることは違法ではありません。希望退職・早期退職は、会社からの「提案」なのです。
あくまで提案ですから、拒否することはできます。とはいえ、戦力外通告を受けているわけですから、会社には居づらくなります。
退職勧奨を拒否した社員に対して、会社が不当な異動や降格を命じることもパワハラに当たる可能性があるため、基本的にはできません。(ただし表面上は昇進という形にして、本人が望まない部署に異動させたりする会社はあります)
次に会社がとる措置は、評価をきちんとして、給与を下げることです。給与も急に下げることはできないので、少しずつ下げていきます。
例えば、年収800万の人でも、パフォーマンスに見合った適正な年収が400〜500万と判断されたら、2〜3年かけてその金額まで落としていきます
50代後半の方なら、60歳の定年まであと少しです。年収が400〜500万まで落ちるまでは数年かかりますから、給料が下がり切る前に逃げ切ることも可能でしょう。
50代前半の方であっても、「給料が安くなってもいい、それでも粘り強くこの会社で頑張っていくんだ」と思うのであれば、会社に残るのもひとつの方法ではあります。
ですが、望まれない会社にいて、望まれていない、望んでもいない仕事をして、毎日を過ごすのって、楽しいでしょうか。やはり月曜から金曜まで有意義に働いて、土日を楽しく過ごすのが、人生というものではないでしょうか?
退職勧奨を受けた時点で、会社との信頼関係は失われています。精神的につらくなり、幸せにはなれないのではないでしょうか。この方法は、私はあまりお勧めできません。
退職勧奨されても、給与が大きく下がるまでは数年の時間があります。この時間を使って、牙を研ぎましょう。転職活動をする、副業をする、独立や起業の準備をする、大学で学び直すなど、2〜3年かけて自分を磨き直すのです。
私の元上司で、リストラ評論家の砂山擴三郎さんは、大手自動車メーカー時代に2回リストラされているのですが、それで悟ったことがあるといいます。
それは、会社から「辞めませんか?」と退職勧奨をされても、決して「わかりました」と言わないこと。「わかりました」と答えてしまうと「ですよね」と言ってハンコを押させられてしまいますから、何も言わず、黙っておく。
退職は、双方の合意が必要です。会社が「労働契約を解消しましょうね」と言ってきても、本人の同意がなければ契約解消はできません。これは黒字リストラにおいても同様です。会社が「希望退職しませんか?」と言ってきても、「その条件なら辞めません」と本人が拒否したら、リストラすることはできないのです。
ですから、いちばんのリストラ回避法は同意しないことです。会社をクビになってしまったら、行くところがない。転職しても年収が下がってしまう。いずれは会社を辞めるとしても「今」じゃない。そう思うのだったら、安易に同意してはいけません。
同意しなければ、会社はそれ以上の手が打つことができません。ただし、これはあくまで応急措置。退職勧奨を拒否しても、給与が下がったり、つまらない仕事に変わったりして、今まで通りにはいかなくなります。だから時間を稼いで、牙を研ぐのです。
2〜3年の時間があれば、自分を変えることができます。50代の方には、能力はあるのです。退職勧奨されてしまうのは、考え方が固着し「このままでいいんだ」と思っていたり、世の中の価値観とズレてしまっていることに原因があります。
弊社で実施した「50代社員に関する意識調査」では、50代のオフィスワーカー100名に「あなたは仕事をする上で、どのような点を課題と感じていますか」と聞いてみました。すると、44.0%が「特に課題と感じることはない」と回答していました。
また、「あなたは仕事に役立つ情報収集のために新聞・書籍購読やセミナー参加などの自己学習に日頃から取り組んでいますか?」という質問では、「あまり取り組んでいない」が47.0%、「まったく取り組んでいない」が17.0%。6割以上の人が自己研鑽に取り組んでいませんでした。
にもかかわらず、「あなたの給料は、仕事の成果と比べて適正だと思いますか?」という質問では、約4割の50代社員が「低いと思う」と回答していました。
課題があることを自覚せず、自己学習もせず、それでいて「給料が低い」と不満を感じている。これは今の企業の価値観ではアウトです。このような状態が、ここ数年の中高年のリストラの急増に繋がってしまっているのでしょう。
自分のキャリアや働き方を振り返り、課題を自覚する。新聞や本を読み、セミナーなどに参加して勉強をする。自身の適正な年収を知る。こうした行動が必要です。
通勤電車でゲームや動画ばかり見ているのなら、新聞を読みましょう。読売新聞の購読者の平均年収は500万、朝日新聞が600万、日経新聞は1000万と言われています。日経新聞を読めば、自然と年収も上がるかもしれません。
それは毎日、情報収集をしっかりと行っているからです。世界や日本の動き、経済、景気、マーケットの動向、自社と競合のトレンドなど、幅広く情報収集を行って、勉強していれば、自然と考え方も変わります。だから日経読者の年収は高いのです。
日経電子版のCMで、「365日、この差は大きい」と言っていますが、これは本当にその通りだと思います。2〜3年間、自分を磨けば、十分に復活できます。
キャリアを棚卸しして、強みと弱みを再確認する。これまで学んできたことを体系化し、どんな会社に行っても通用するスキルにする。他社で副業やボランティアなどをしてみて、転職や独立・起業の準備をする。牙を研ぐ方法は、いくらでもあります。
「考え方」を変えれば、復活は十分できる
特にお勧めしたいのは、転職活動です。転職活動をすると、だいたい打ちのめされます。登録会社や面接で「えーっ」と思うことを言われたり、「こんなに俺って仕事ないんだ」「800万で雇ってくれるところないんだ」とショックを受けて傷つくでしょう。でもそれこそが、自分を変えるきっかけになるのです。
中高年の転職は、1回目はまずうまくいきません。今までの会社では通用したことが、次の会社では通用しなくなります。年収も大幅に下がります。それは、本人が自覚していない凝り固まった考え方があるからです。
でも、外の世界を見ると、自分の足りないところが見えてきます。それを実感して、考え方を改めた人は、次の転職では成功します。
例えば、大手企業で働いている人も、いったん中小企業に移り、年収800万から500万に下がったら、考え方が変わります。考え方が変われば、行動も変わり、そこで幹部になれるかもしれません。年収800万は難しいかもしれませんが、750万ぐらいはいくでしょう。転職は、失敗してからが始まりです。
転職まではしなくても、まずは人材紹介会社に登録してみてはいかがでしょうか?
50代の方は、20年、30年と働いてきたのですから、能力も経験もあります。退職勧奨されてしまうのは、それが体系化できていないか、考え方が凝り固まっているか、世の中の常識に付いていっていないか、そのいずれかです。
自分の能力や経験を信じて、2〜3年間、牙を研ぎましょう。考え方さえ変えることができれば、たとえリストラされても、必ずリベンジできるはずです。
次回につづく
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
成果主義、職務主義、年俸制、人事部廃止… 90年代から変わらぬ「人事」の構造、変わらぬ平均給与額が、日本を世界トップクラスの「社員が会社を信頼しない国」へと導いたのです。
なぜ変革が進まないのか、その背後に潜む「考え方」の欠如とは何でしょうか?
中学時代に習ったこと、覚えてますか?
多くの人にとっては、すべての勉強の基礎になっている大事な「当たり前」のことですが、思い出せと言われても思い出せる方は少ないでしょう。
この「この一冊ですべてわかる 人事制度の基本」には、人事の当たり前が詰まっています。
ー「なぜ、あの人が?」
なぜ多くの企業で「評価基準」が曖昧になっているのでしょうか。
どうすれば給与が上がるのでしょうか。
11,000人超の人事担当者から絶大な支持を得るコンサルタントが、今まで9割の会社が明かさなかった「絶対的な指標」を初公開!
テレワーク時代には「ジョブ型」に留まらず、「超ジョブ型人事」が不可欠。
その一番の理由は、テレワークをはじめとするこれからの働き方には「監視しない事が重要であるから」です。
人事の“必須科目”を押さえる
プロの人事力
次のステージに向けて成長するためのキホン
人事担当者に必要な知識・学び方、仕事に対する心構え、業務との向き合い方、さらには人事マネージャー、人事部長へとキャリアアップするために必要な能力・スキルを一挙公開
新連載「人事の超プロが明かす、リストラ時代の生き残り戦略」 2021年4月1日、高年齢者雇用安定法が改正されました。これによって「70歳までの就業機会の確保」が企業の努力義務になりました。 少子高齢化が急速に進展し人口が減少する中で、経済社会の活力を維持するため、働く意欲がある高年齢者がその能力を十分に発揮できるよう、高年齢者が活躍できる環境の整備を目的として、「高年齢者の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)」の一部が改正され、令和3年4月1日から施行されています。
50代になると、地位の格差、立場の格差などが開いてきます。しかし役職の有無や、組織やチームの規模を問わず、リーダーシップが求められるようになります。 では、リーダーに求められる資質とは、どのようなものでしょうか。 私は企業のリーダー研修プログラムで「目指すべき人材像」を5つのポイントに分けて紹介しています。OK例とNG例を交えながら説明しましょう。
コロナ禍前後からリストラの対象となっているのは、おもに45歳以上の中高年です。しかし40代、50代になったからといって、誰もがリストラされるわけではありません。歳を取っても会社で生き残れる人には、3つの特徴があります。 1つは、マネジメント力があること。マネジメント力には、「タスクマネジメント」と「ヒューマンマネジメント」の2つのスキルがあり、どちらも重要です。
東京商工リサーチによると、2021年に希望退職を募った上場企業は80社以上。上場企業の希望・早期退職募集は2019年以降、3年連続で1万人を突破。2021年の募集者数は判明しているだけでも1万5000人を超えています。 コロナ禍によって経営が悪化した企業もありますが、大手企業の多くは黒字経営にもかかわらず希望退職・早期退職という名目の大規模なリストラに踏み切っています。なぜこれほどリストラ増えているのか。いま一度、その背景を理解しておきましょう。
ここ数年、「50代についての意見を聞かせてください」というご依頼が増えてきました。当連載もそうですし、『人事の超プロが教える 会社員 50歳からの生き残り戦略』(PHPビジネス新書)という本も出させていただきました。やはり中高年を対象とした黒字リストラや早期退職・希望退職を募る企業が増えているからでしょう。今回も「人事は中高年を実はこう見ている」というリクエストをいただきました。私は人事部時代、中高年の社員をどう見ていたのか。今回はこうしたテーマで、率直な意見や感想をお伝えしたいと思います。
50代のリストラ対策のひとつは、若手の指導です。「あの人、若手を育てるのがうまいよね」「あの人に預ければ、育ててくれるよね」と社内で評判が立つのは、リストラを防ぐ有効な手立てとなります。
会社はあなたを不要と判断したとき、どんな動きをするのか。前回は中高年のリストラ回避法についてお伝えしましたが、今回はこのテーマについてもう少し深掘りしてみましょう。 この人は給与に見合った働きをしていない、このまま会社にいてもらっては困る。会社がそう判断したときの最初の動きは、「解任」と「異動」です。
50代のビジネスパーソンの皆さんに質問します。通勤時間は何をされていますか?まさかゲームをしてないですよね…。なぜこんな質問をしたのかといいますと、管理職研修をしていると、伝統的な会社でも上場企業でも新聞を読んでない人が多いのです。新聞、特に日経はビジネスパーソンにとって読んでいるのが当たり前のはずですが、読んでいない人がほとんど。ゲームを楽しむのもいいですが、私たちがやっているのはビジネスです。