管理職の能力が不足している、期待した成果を出してくれない。そんな場合、人事はどのように降格を伝えたらいいのでしょうか? 年功序列の撤廃、ジョブ型の導入などによって、今後、人事は管理職に降格を伝える場面が増えていくでしょう。そこで今回は、人事のプロフェッショナル集団、フォー・ノーツ株式会社の代表であり、『超ジョブ型人事革命』(日経BP)の著者・西尾太が、降格人事の伝え方と、管理職の降格基準についてお伝えします。
降格とは、等級を下げること。役職から外すことは、降職または解任、ポストオフとも呼ばれています。管理職が能力を発揮しない、成果が上がらない、トラブルを起こす、あるいは部下がやめる、こうした状態に陥ったときは、ポストオフが必要です。
パワハラ上司、セクハラ上司などを放置していると、会社は悪い方向にしか行きません。ためらっていると、部下も組織も死んでいってしまいます。管理職に問題がある場合は、速やかにポストから外すべきです。
ただし、その際には注意が必要です。降格・降職は、管理職の収入や名誉にも関わる問題です。ポストオフを行う場合には、一定の基準を設けておかなくてはいけません。以下の一覧は、私たちがクライアントに提供している「職位要件」という「管理職が果たすべき役割」を明示したものです。
降格・降職の基準がない会社は、まずは管理職が果たすべき要件を示し、任免・解任の理由を明らかにすることが必要です。上記の一覧は、規模にかかわらず、さまざまな企業がほぼそのまま活用し、管理職の任免・解任の判断材料にしています。ぜひ参考にしてみてください。
降格・降職の基準がなく、一回、管理職に上がると下げる仕組みがない会社は少なくありません。しかし、誰かを下げないと、誰かを上げられません。こうした年功序列型の人事制度を見直していかないと、若年層の処遇を上げられず、若手の優秀層から辞めていってしまいます。
部長代理、担当部長、部長補佐といったポストを増やしている企業もありますが、そうした管理職が高額な年収に見合ったパフォーマンスを発揮しているとは限りません。むしろ「隙間役職」を増やして中高年の年収を上げ続けてしまったことが、企業経営を逼迫させる大きな原因になっているのでないでしょうか?
超高齢化社会に突入した日本において、企業が生き残っていくために必要なのは、給与とパフォーマンスを比例させ、人件費を適正化していくことです。そのためには、ポストオフが重要になってきます。人事は、役職・職位に応じた「管理職が果たすべき役割」を明確に示し、基準に満たない場合は降格・降職になるというルールをつくり、しっかりと運用していくべきでしょう。
ポストオフの基準があれば、能力不足の管理職が増えていくことのストッパーになります。社長や役員の覚えがよく、能力のない人材が昇格してしまう。そんなケースがよくありますが、職位要件を定めておけば、その基準と照らし合わせて「本当に部門目標を設定できるんですか?」「5年後のビジョンを作って方針と戦略を示せるんですよね?」と牽制することで、不当な昇格を抑制することができます。
ダメなものをダメと伝えることは、人事の重要な役割です。能力不足の管理職も、降格によって自身の問題に気づいて改善するかもしれません。ポストオフができない会社は、その成長の機会を奪っているのです。何がダメなのかを示す基準を設け、解任の理由を本人にしっかりと伝えましょう。
もうひとつ、役職に対する風土を変えていくことも、管理職の成長を促す効果的な方法です。これは会社の考え方によりますが、役職なんて学級委員みたいなもの、そのときに適した人がなればいいし、そうでなければ外れてもらう、そういう考え方に改めていくのもアリだと思います。
ちょっとやってみてダメだったら、また別の人が管理職を務める。このような人事制度に変えて、役職は外れるのが当たり前ぐらいの風土をつくっていくのです。
有名な例では、サイバーエージェントが「CA8」という制度を導入し、画期的な人事制度として注目を浴びました。これは役員会の人数を8名とし、2年に一度、2名を交代するというものです。CA8の効果は大きく、役員のポストが安泰でなくなり、若手にポストを開けたことによって、社員みんながよく働くようになったといいます。
管理職手当てとして10万円とかをつけてしまうと、役職から外れたら給与が10万円下がってしまうため、役職者・職位者の手当てについても併せて考えておかなければなりませんが、このように役職について根本から見直してみてもいいのではないでしょうか?
役職から外れても、不名誉なことではなく、名誉挽回もできる。そうした風土をつくっていくことによって、組織の活性化につながるはずです。降格した管理職には、求めることを伝え、年齢に関係なく、遠慮せずフィードバックする。それで変われる人もたくさんいるはずです。
いずれにしても、役職から外すべきときは外す。問題が起こったときは、速やかにポストオフを実行する。こうした体制を確立しないと、組織がどんどん腐っていきます。まずは「職位要件」を定め、管理職の任免・解任の判断基準を明確にしましょう。
人事という職に就いたならば、読む“義務”がある1冊
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会社は利益を追求する組織ですが、社員に求めるものはそれだけではありません。
会社における「困った人」を出さないために、人事は社員を評価する制度をしっかりと定めましょう。
採用に関する問題を解決していくためには、「自社が求める人材像」を明確にすることが必要です。今回は「心と能力」という観点に着目してみましょう。「心はきれいだけど、能力が低い人」と「心はきれいではないけれど、能力は高い人」、あなたの会社ではどちら採用しますか?
給与の額は評価によって決まります。
そのため、評価は給与を額を決めるための手段に過ぎない、
と考える人も少なくありません。
そのような考え方は、正当な評価につながらないことがあるので注意です。
求めるものがはっきりしていなければ、何をしても「ブレる人事」になります。
ブレない人事を実現するに、会社が求めるものを人事ポリシーで示しましょう。
人手不足が深刻化する現在、企業の約8割(82.9%)が2024年に賃上げを実施予定だといいます。「うちは給与が安いので人が採れない」「給与が低いので人が辞めてしまう」「給与を上げたいのはもちろんだが、現実的には厳しい」とおっしゃる経営者が多くいます。しかし、給与を上げれば人が採用でき、定着し続けてくれるのでしょうか。今回は、この問題を深掘りしてみたいと思います。
会社にとって社長は意思決定者であり、常に先頭を走り続ける存在です。
それでも、いつでも正しい判断ができるわけではありません。
社長の指示や行動が会社の人事ポリシーに沿わない場合、
自信をもって「待った」をかけられる人事担当者になってください。