2019.09.20
若手人事が必ず悩む、現場との距離感の問題。
実際にどのように現場と付き合っていけばよいのか、
人事での経験を元にお話しいたします。
「あ、これは危ないかも」と気づくヒントにしていただけますと幸いです。
人事担当者にとって、大切なのは現場との接点。これまでのコラムでも、空き時間には社内をぶらぶらして、部門長や現場となるべく多く会話し、打ち解けることをおすすめしてきました。しかし、同時に人事担当者に求められるのが「距離感」です。今回は、適切な「距離感」についてご説明しましょう。
人事領域を志望する人の中には、他人に興味がある、誰かを助けることにやりがいを感じる、といった人も多いのではないでしょうか。人のために、社員のために、何かをしてあげたい。役に立ちたい。そのような思いを持つことはとても大切なことです。
しかしその一方で、その思いが強くなりすぎると、思わぬ問題を引き起こすことがあります。業務を超えて、ある特定の社員個人に思い入れが強くなりすぎてしまったり、「こうしてあげたほうがいい」「こうなったらいいな」という個人としての希望を人事部の意見であるかのように、社員に伝えてしまったり――。
個人に対する思い入れの強さは、組織としての不均衡を招きかねません。また、企業の人事担当者と社員という関係性の影響で、自分が「個人的な意見」だと思って伝えたとしても、相手がそう受け取っていないこともあるのです。
人事部は評価や給与額など、センシティブな情報を目にする機会が多い部門です。「評価に納得がいかない」「給与を上げてほしい」。社員からそんな声が届くこともあるでしょう。また、場合によっては社員同士のトラブルや、パワハラ、セクハラなどの相談を受けることもあります。さらには、相談をしてくる社員が、精神面の不調を患っていることも。
若手人事のうちは、こういった重めの相談が来たとしても、思い入れすぎてしまわないように心がけてください。良かれと思ってやったことが、後にトラブルを引き起こすことになりかねません。
これまで目にした事例で言うと、例えば
・給与が減額になったことを相談してきた社員に、同情心から「社宅に入れるように何とか努力します」と答えてしまった。結果的に当該社員は社宅に入れず「人事部は入れると言ったのに」とトラブルになった。
・精神的に不調の社員からの相談電話が毎日深夜に及び、断り切れずに対応していたら自分も体調を崩してしまった
・ある社員からパワハラの相談を受け、それを信じて個別に該当社員の上司を詰問したら、全て社員の嘘だったと発覚した
などのケースがあります。
いずれの場合でも、まず人事部内で情報を共有し、自分の上司にエスカレーションをして、指示を仰ぐのが得策でしょう。自分では冷静なつもりでも、やはり感情や、主観が入っているケースも多々あるからです。
遠すぎてもNG。かといって近すぎてもトラブルを引き起こしかねない現場との距離感。適切な「距離感」を保つために、ほかに心がけてほしいのは「タバコ部屋には積極的に行くが、飲み会には注意する」ということです。
なぜかというと、まず、タバコ部屋はオフィス内にあるオフィシャルな場所です。滞在時間が何時間にも及ぶことはありませんし、当たり前ですが、全員素面です。そして、本当に話したい人がいれば「後でちょっといいですか」と時間を作ってもらうこともできます。
例えば自分が若手人事で、話をしたい相手が部門長の場合、わざわざ部門長の席に「ちょっとお話ししたいことがありまして……」と訪ねていくと、部門長自身も、周囲も「すわ何事か」と身構えてしまうことでしょう。タバコ部屋であれば、それが自然にできる、ということですね。
一方で、注意していたのは飲み会です。特に査定会議の直前直後などは、現場の限られたメンバーとの飲み会に誘われても行かないようにした方が良いと思います。
「どんな評価が付きそうか」「あのポジションにあの人が異動した理由は?」などの人事の業務内容に関するものは、多くの社員が気になることだと思いますが、人事担当者としては口が裂けても言えません。しかし、アルコールが入っていると「今なら答えてくれるかも」と考えたり、酔いの勢いでズバッと斬り込んだり、聞いてくる社員もいることでしょう。自分自身はウーロン茶に徹するとしても、もし他の社員がそうした飲み会を目にした場合、あらぬ噂を立てられないとも限りません。
「タバコ部屋はOK、飲み会は注意」。覚えておくとよいかもしれません。
経営と現場社員との、ちょうど中間に立つのが人事のお仕事です。「社員」の側に偏りすぎてしまわないように、迷った時はまず人事部内の上司に相談をしてみるようにしましょう。くれぐれも、一人で抱え込みすぎないようにしてくださいね。
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